旧サイト(更新終了) お問い合わせメール
神が潜むデザイン 第33回:デザインとアート、社会の間で。/鎌田順也
「神は細部に宿る」と言いますが、本コラムでは、デザイナーがこれまでに「神」を感じた作品を紹介していただくとともに、ご自身のこだわりを語っていただきます。リレーコラムですので、執筆者には次の方にバトンを渡していただきます。
Designer FILE 33 鎌田順也(かまたじゅんや):1976年生まれ。北海道に軸足を置きながら、東京、横浜、千葉、奈良、山口など全国各地の企業・店舗ブランディングを幅広く手がける。「千葉県柏市 道の駅しょうなん」の運営方針からクリエイションするデザインコンサルティング、「安平町立早来学園」のブランディングなど行政の案件も多い。主な受賞歴として、ニューヨーク ONE SHOW 金賞、ロンドン D&AD 金賞、JAGDA新人賞、JAGDA賞、日本サインデザイン賞 最優秀賞、日本パッケージデザイン大賞 金賞、グッドデザイン賞など。審査員として、大阪・関西万博ロゴマーク、ロンドン D&ADなどに招請される。 https://kamadajunya.com/ Instagram:@kamada_junya
●「わかる」デザイン デザインという仕事を続けていると、「わかりやすい」「わかりにくい」ということで頭を悩ますことが多々あります。「わかりやすい」とはどういうことなのでしょうか? 私は札幌を拠点に道内外のさまざまな場所でお仕事をさせていただいていますが、地方に行けばいくほど、デザインのすべきことについて考えさせられます。 地方では、年鑑や展覧会場にあるような華やかなデザインはまったくといっていいほど目に入ってこず、ただ、人々の生活があるのみです。私はその状態がとてつもなく心安らぎます。同時に年鑑に掲載されたデザイン、展覧会場に飾られたデザインに、ものすごく憧れる自分もいます。 試しにある日、とあるデザイン賞で賞をとったポスターを手に入れ、知人の農場の壁に貼ってみました。普段まったくグラフィックデザインに接点のない人にどう見えるのか、反応を確かめたかったのです。反応を見ていると、驚くほどに誰も見ていない。存在に気づきもしていません。これにはかなりのショックを受けました。 私は「わかりやすい」デザインが良い、という話をしているのではありません。私もグラフィックデザイナーのはしくれですから、「伝わるだけ」でなく、美しく感性の琴線に触れるデザインをつくりたいと心から思っています。 あるとき、「わかりやすい」と「わかる」は違うことに気づきました。「わかりやすい」はこれでもかと説明している状態、見た人に想像の余地を残していない。 Appleの製品には取り扱い説明書がついていません。なので「わかりづらい」ということになります。ですが、製品を使う人が感覚的に使い方を発見し、理解できる「わかる」デザインになっている。 これだ! と思いました。これなら田舎のお婆ちゃんでも「わかる」し、玄人のデザイナーにも「わかる」、そんなデザインがつくれるのではないか…? 生活の中で使われると、誰も気にもとめないけど、置かれる場所が変わるとデザイン本来のポテンシャル、美しさが見えてくる、そんなデザインがしたい、そう強く思うようになりました。 ●「アート」ディレクター それが少しづつ形になってきたものをいくつかご紹介させていただきます。 片山農場のわけあり野菜のマークでは、恵を表す金の丸をほんの少しだけ歪ませて、わけあり野菜の本質(見え方が少し良くないだけで、味は変わらないこと)を表現しました。