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神が潜むデザイン


第30回:紙の進化/岡室 健


「神は細部に宿る」と言いますが、本コラムでは、デザイナーがこれまでに「神」を感じた作品を紹介していただくとともに、ご自身のこだわりを語っていただきます。リレーコラムですので、執筆者には次の方にバトンを渡していただきます。




Designer FILE 30

岡室 健(おかむろ けん):クリエイティブディレクター、アートディレクター、グラフィックデザイナー。1978年東京生まれ。東京藝術大学デザイン化大学院修了。2006年博報堂に入社。HAKUHDO DESIGN、本社を経て現在博報堂クリエイティブヴォックス所属。広告業務を中心に活動しながら、紙を中心としたさまざまな表現の可能性を模索する活動を行っている。主な受賞に、ADC賞、TDC準グランプリ、JAGDA新人賞、JAGDA賞など受賞多数。ADC会員、JAGDA会員、TDC会員。


●グラフィックデザインとは、
新しいコミュニケーションを視覚的に発明すること


僕は広告代理店でさまざまなクライアントさんの案件に向き合っています。この仕事の面白いところは、常に課題や問題が異なっていて、見つけるべき答えが決まっていないことです。抱えている問題や実現したい事柄は、会社ごとに商材も規模もフェーズもぜんぜん違うので、世の中をどう見るか、どう捉えるかがとても大切で、生活者の感じ方を丁寧にイメージできないとデザインやコミュニケーションは成立しないし、設計できません。

またメディアそのものの進化も同時に学ばなくてはいけなくて、正直とても難しい時代だなと思います。でも、どんな時代も優れたデザインには、メディアそのものを捉え直し、進化させているものが多いです。お笑いの話になってしまいますが、ダウンタウンが登場してからその世界がいろいろ変わったのは、彼らは面白いをやり方ではなく本質で捉え、いわゆる「気づき」を今の時代に築いてきたからだと思います。

それまでとはまったく違った切り口なのに、みんながその方が面白い! そういった視野が広がるお笑いを作ったと考えれば、それをデザインと捉えてもよいのではないか? なんて思ったりもします。結局デザインはどんな時代の流れの中でも、その中に新しい考え方や価値観を視覚的表現で発明することだと僕は思っています。

僕は昔から紙が好きです。デザイナーにはそういった人は多いと思います。祖父がさまざまな紙のおもちゃをお土産に買ってきてくれたり、紙の工作や遊び方を教えてくれた影響から、紙のプロダクト的なものがずっと好きでした。大学の卒業制作も、さまざまな形の10冊の本をつくったし、修了制作では紙風船で文字を作りました。

紙の魅力は、紙そのものの形状や使い方を変化させるだけで、その存在と情報や意味が大きく変化することです。紙というメディアを発明した人、本当に凄い。少し調べてみると、紀元前2世紀頃、中国で生まれたとなっています。僕個人の見解だと、紙が生まれた時代においては、今でいうデジタルやWebという考え方が今の時代を大きく進化させたのと同じぐらいの発明だと感じています。

そんな紙とデザインは密接な関係があって、紙の進化がデザインを進化させたと言っても過言ではなく、そして今があると感じています。


●メディアとしての紙とデザイン

ここから僕の作品に話になるのですが、何かを表現するときに、そのメディアの中身だけを考えるだけでは足りない時代が今だと思います。伝えるために、そのメディアまでもデザインしたり考えるまでがデザイナーの仕事になる時代。そんな風に仕事をしているうちに、メディアを開発する方がもしかしたたら面白いのではないか? と考えるようになりました。今回は「メディア」はデザインにどんな影響が与えられるか? を意識して作った、僕のいくつかの作品を紹介させてください。

・FEEL TYPE
紙風船のタイポグラフィー。子供が文字に触ったり遊んだりすることで、学びを促進させる学習用具を制作しました。モノが壊れることも、大切に扱うことも、いろんなことが学べる文字のデザイン。紙を何かと掛け合わせることはここから始まった。


「FEEL TYPE」。(クリックで拡大)
 

・光れ!紙展
竹尾のギャラリーで、導電性インク(電気が通るインク)を主体とした紙の展示会を実施。さまざまなデザイナーにこのインクを活用したデザインを考えてもらい、それぞれの手法で紙の新しい表現を行ってもらいました。自分が作ったものに、誰かが表現を載せてくれるのは楽しい。僕自身はLEDを置く場所によって文字が浮かび上がる紙の基盤を制作し、会場の演出を展開しました。紙のように軽やかでカジュアルなものが光ることで、新しい紙の可能性を模索した、実験的な展示でした。



「光れ!紙展」。(クリックで拡大)

「光れ!紙展」。(クリックで拡大)

・FLOTICON BALLOON
「光れ!紙展」からの発展。紙に導電性インクをプリントし、風船の内部に仕込ませることで、さまざまな模様や絵柄を浮かび上がらせる「FLOTICON BALLOON」の開発。この風船を持ち帰られるイルミネーションとして企画し、六本木ヒルズのクリスマスにて10,000個配布しました。この年のクリスマスの企画として各商業施設の中でも大きな反響を呼び、持ち帰られたイルミネーションが東京中を彩りました。風船も1つのメディアとして捉えれば、たくさんのコミュニケーションが生まれていきます。


「FLOTICON BALLOON」。(クリックで拡大)

「FLOTICON BALLOON」。(クリックで拡大)

・光画展
OFS Gallery にて「光画展」を実施した。ダンボールに導電性インクをシルクスクリーンでプリント。これをキャンバスとしてみたて、そこにLEDを配置することで自由に表現してもらう企画展。デザイナーの仲條正義氏、写真家の小山泰介氏、ROTH BART BARONの三船雅也氏など、さまざまなクリエイターに参加していただき、光の線を描いてもらいました。


「光画展」。(クリックで拡大)
 


「光画展」。(クリックで拡大)

「光画展」。(クリックで拡大)


「光画展」。(クリックで拡大)

「光画展」。(クリックで拡大)

・パースペクティブデスクノート

視覚的、触覚的な印象の変化によってモノの見え方が一変するギミックを使った作品。普段紙を扱っていると、きれいに紙が重なっている状態よりも、手で側面を斜めにずらしていくだけで重ねた紙の厚みが極端に薄く感じ錯覚が面白いと感じていました。その錯覚を応用してパースが元々ついているノートを制作。本という媒体も、また、まだまだ進化していくと考えています。

「パースペクティブデスクノート」。(クリックで拡大)
 


(2023年11
月29日更新)

 

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