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神が潜むデザイン


第29回:「ロゴのデザイン」/木住野彰悟


「神は細部に宿る」と言いますが、本コラムでは、デザイナーがこれまでに「神」を感じた作品を紹介していただくとともに、ご自身のこだわりを語っていただきます。リレーコラムですので、執筆者には次の方にバトンを渡していただきます。




Designer FILE 29

木住野彰悟(きしのしょうご):アートディレクター、グラフィックデザイナー。1975年東京都出身。2007年にグラフィックデザイン事務所6D設立。企業や商品のビジュアルアイデンティティをメインに、ロゴやパッケージデザイン、空間におけるサインデザインなどを手掛ける。主な受賞にD&AD、カンヌ、One Show、アジアデザイン賞、ADC賞、JAGDA賞、パッケージデザイン賞、サインデザイン賞 他国内外多数。ADC会員、JAGDA会員。主な仕事に、神奈川県立図書館、対馬博物館、北村写真機店、JAL SKY MUESUMのVIなどがある。
https://www.6d-k.com/


●ロゴデザインの良さとは

20代前半、まだ未熟なスタッフデザイナーだった頃、ロゴを任されても形にできず、何をどうしたらデザインが完成するのかも分からず、日々貪るように世の中にあるデザインを穴の開くように見ていました。

その当時のものから、過去のデザインまで、とにかくたくさんのロゴを見てきました。スタッフとして働いていたデザイン事務所(廣村デザイン事務所)にある本を眺め、自分が気になったロゴマークを片っ端からコピーして、仕事が終わった深夜に、良い部分を吸収しようとそれらのロゴをがむしゃらにトレースしていました。

そんな中で、印象深く自分が影響を受けたと感じるものは、「べにや無何有」「INDIVI」「無印良品」「MOMA」の4つのロゴデザインです。「べにや無何有」は無何有の漢字の部位をギリギリまで削ぎ落とすことでロゴデザインとして成立させていて、「INDIVI」はNとVに少し変化を加えているだけ、「無印良品」「MOMA」に至っては書体(ほぼ)のまま。そんなシンプルなロゴを作れるようになりたいなと思っていました。

「べにや無何有」 https://mukayu.com/
「INDIVI」 https://store.world.co.jp/s/brand/indivi/
「無印良品」 https://www.muji.com/jp/ja/store
「MOMA」 https://www.moma.org/

●コンセプトを語るロゴを

若い頃の自分は、これらのロゴがカッコいいのは分かるのですが、それを作ることはできませんでした。文字とロゴの違いは何? どこからがロゴでどこまでが文字なの? どんな過程を経るとロゴになるのか? 未熟なデザイナーだった自分には、これらの正解が分からず苦しんでいました。

ただ1つ分かるのは、これらのデザインがとても良いということでした。手を加えすぎない、少ない手数で成立させること、それはよい素材を集めること。このようなロゴマークに強い憧れをもち、自分もそういうロゴを作れるように、デザインの指針としました。

見て良いと感じるもの、見た人が理屈なく良いと感じるデザイン、コンセプトとともにそう感じてもらえるデザインを作れる人になりたい。

独立して15年を超え、まだ完全に上手にロゴを作れるようにはなっていません。道の途中ではありますが、少しでも理想に近づいてきたと感じるロゴが、自分の仕事の中にいくつかあります。

「北村写真機店」「結城澤屋」「久松湯」。これらはビジュアルを記号的に表現しているのですが、ロゴを見た人が直感的にコンセプトを理解してもらえているのではと感じており、コンセプトを語れるロゴになったのではないかと思っています。

あこがれていたようなロゴをデザインできるようになるにはまだまだ遠いかもしれませんが、目標としていた姿に少しでも近づけていたら嬉しいです


「北村写真機店」。(クリックで拡大)

「北村写真機店」。(クリックで拡大)


「結城澤屋」。(クリックで拡大)

「結城澤屋」。(クリックで拡大)


「久松湯」。(クリックで拡大)

「久松湯」。(クリックで拡大)



(2023年10
月25日更新)

 

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