Company file

Company file


旧サイト(更新終了)






お問い合わせメール

 

INDEX  イラスト>  写真>  デザイン>  テキスト



神が潜むデザイン


第26回:移りゆくグラフィックデザインの現場から/藤代範雄


「神は細部に宿る」と言いますが、本コラムでは、デザイナーがこれまでに「神」を感じた作品を紹介していただくとともに、ご自身のこだわりを語っていただきます。リレーコラムですので、執筆者には次の方にバトンを渡していただきます。




Designer FILE 26

藤代範雄(ふじしろのりお):グラフィックデザイナー。スイスモントルー国際広告芸術祭ゴールデンアワードグランプリ金賞。フランスルーブル宮装飾美術館作品永久収蔵。デンマークオーフス国立ポスターミュージアム個展開催。イギリス日本国大使館、ポルトガルリスボンオリエント美術館、ロシア国立東洋美術館個展開催作品永久収蔵。2017年、2018年、2020年、2021年、2022年、2023年、銀座三越にてガラス個展開催。
https://www.fujishiro-design.jp/


●デザインをめぐる時代の変化

いわゆる「グラフィックデザイン」の変遷を、戦後から現代に至るまで、現場で体感してきました。私が学び、制作を始めた頃、それは「商業デザイン」と呼ばれる手作業の仕事でした。デジタル技術が発展し、現場にコンピュータが導入されるにつれて、「商業デザイン」ではなく「グラフィックデザイン」と呼ばれることが多くなったように思います。

アナログからデジタルへ移り変わる時代、私個人としてはもっぱらアナログ(手作業)の人間でした。だからこそ、その変化によって生み出される作品には大きな衝撃を受けました。例えば河口洋一郎氏の3D CGグラフィックの作品。彼の作品は私にとって未知で、とても魅力的なものでした。その他に斬新な作品を次々に世に送り出していた横尾忠則氏やサイトウマコト氏の作品にも感動を覚えました。続々と新しいものが生まれるデザインの世界のダイナミズム、時代の流れを肌で感じていました。

一方、商業デザインの現場においては、デジタル化によって作業時間が大幅に短縮されるようになりました。また、技術の普及によりグラフィックデザインのハードルが下がり、対価も下がったかと思います。パソコンがあれば、いや今日ではスマートフォンさえあれば、誰でも作れるデザインらしきものが世の中に溢れています。しかし、だからこそ「良いデザイン」の重要性が増した時代である、と言うこともできるのではないでしょうか


●デザインをする上で大切にしていること

私がデザインを手がける上で留意していること。それは、第1にリズミカルであることです。デザインにはリズムがあります。もちろんデザインそのものから音が聞こえるわけではないのですが、私は目で見て感じられるリズムをもっとも大切にしています。

第2に機能的であること。デザインは元来、人を助けたり、案内したり、行動を促すために存在すると考えています。だから見やすさや使いやすさは大切です。

第3に目を引くこと。「ここにいるよ!」と自らの存在をアピールして注目を集めることも、デザインにとって極めて重要な役割です。

これら3点の結果として、売れること。これが重要です。商業デザインの仕事には、当然クライアントがいます。クライアントにとってもっとも重要なことは製品・サービスが売れること。だから売れることはデザインの着地点だと考えています。

参考として、これまで私が手掛けたお菓子のパッケージをご紹介します。茨城県にある亀印製菓の「天満月」と「水戸の梅」、山西商店の「おみたまプリン」。これらは上記の3つのポイントを大切にして制作し、現在もお客様にご好評いただいているロングセラー商品です。


「おみたまプリン」。(クリックで拡大)

「おみたまプリン」。(クリックで拡大)


「水戸の梅」。(クリックで拡大)

「天満月」。(クリックで拡大)


●作品制作について

商業デザイン以外の作品として、もっとも多く制作したものはポスターです。およそ5,000枚以上制作したと思います。特に2001年のアメリカ同時多発テロおよびそれに続いた対テロ戦争の衝撃をもとに描いた「テロと報復」という作品は、能面をモチーフとしていますが、争い、怒り、悲しみなど人間にとって普遍的なものを表現できたと、自分でも気に入っています。このポスターはルーヴル宮パリ装飾芸術美術館に永久収蔵されました。


「テロと報復」。(クリックで拡大)

「テロと報復」。(クリックで拡大)


近年はガラス工芸やシルクスクリーン印刷での新しい表現方法を模索しています。デジタル全盛の今、デザインを始めたときからデジタルのみという人が増えているのではないでしょうか。アナログ(手作業)の時代を存分に経験している私だからこそ、この時代にお見せすることのできる作品があるのではないかと考えています。そのためにも新しい素材や表現方法に挑戦し続けることが重要で、今後も模索していきたいと思っています。

 


(2023年4
月11日更新)

 

[ご利用について] [プライバシーについて] [会社概要] [お問い合わせ]
Copyright (c)2015 colors ltd. All rights reserved