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神が潜むデザイン


第14回:コピー用紙に神がみえる/原田祐馬


「神は細部に宿る」と言いますが、本コラムでは、デザイナーがこれまでに「神」を感じた作品を紹介していただくとともに、ご自身のこだわりを語っていただきます。リレーコラムですので、執筆者には次の方にバトンを渡していただきます。



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原田祐馬(はらだゆうま):UMA/design farm代表。1979年大阪生まれ。京都精華大学芸術学部デザイン学科建築専攻卒業。UMA/design farm代表。どく社共同代表。名古屋芸術大学特別客員教授、グッドデザイン賞審査委員。大阪を拠点に文化や福祉、地域に関わるプロジェクトを中心に、グラフィック、空間、展覧会や企画開発などを通して、理念を可視化し新しい体験をつくりだすことを目指している。「ともに考え、ともにつくる」を大切に、対話と実験を繰り返すデザインを実践。著書に『One Day Esquisse:考える「視点」がみつかるデザインの教室』(誠文堂新光社)。愛犬の名前はワカメ。
http://umamu.jp/

●コピー用紙の観察

僕は、コピー用紙に感動している。透かしてみたり、破ってみたり、くしゃくしゃにしてみたり。もちろん、直接、筆記したり、出力したりもする。しかし、なによりも真っ白な状態であればあるほど、なぜかワクワクしてしまうのです。

みなさんは、コピー用紙をまじまじと眺めたことはありますか?

2015年、僕は、イタリアを訪れ、ブルーノ・ムナーリ協会主催のワークショップに参加しました。ムナーリさんは、1998年に亡くなっていますが、その愛弟子であるシルヴァーナ・スペラーティさんが講師を務め、丸々1日使って、プロジェッティスタのムナーリ流「観察と分析」を実践してみようというプログラムでした。ムナーリさんの本は、読んでいたけど、2008年の滋賀県立美術館(旧・滋賀県立近代美術館)で開催された展覧会「生誕100周年 ブルーノ・ムナーリ展 あの手この手」で、考え方だけでなく、活動そのものを知り、少しでも触れてみたいという気持ちがずっとありました。そんな念願と期待の中、扉をひらいたのでした。


ブルーノ・ムナーリの愛弟子、シルヴァーナ・スペラーティさんが講師を務めたワークショップより。(クリックで拡大)
 

ワークショップでは、A4の紙を1枚渡されて「これはなんですか?」という質問でスタートしました。僕は手を挙げて、「コピー用紙です」と答えると「コピー用紙ってなんですか?」と戻ってくる。確かに、コピー用紙ってなんだろう、誰が名前をつけたのだろうか、と考え始める。次に、「その紙は何色ですか?」という質問が飛んでくる。他の参加者が「白色です!」と答える。そして「あなたのシャツより白いですか?」という質問が飛んでくる。何の変哲もない白だと思い込んでいるが、比べてみると白にも尺度があることに気づかされる。視覚を駆使するだけでも気づいていなかったことが溢れてくる。

そして、次は手を動かしてみることに。コピー用紙らしき自分のシャツより白い、いやもはや青くみえるその紙を、振って破って音を聞いたり、光に当てて紙の肌理に気づいたり。くしゃくしゃにして、ハリのあった紙が布のように柔らかく変質したり、触れば触るほど、もとのかたちは崩れ、新しい魅力が現れてくる体験をし、僕は感動をしました。ワークショップでは、これだけではなく、疑い、考え、楽しむこと、そしてご飯を一緒に食べる時間を共有することで、シルヴァーナさんを通じて、ムナーリさんの視点を身体に感じることができました。


A4のコピー用紙をくしゃくしゃにして丸めてみる。(クリックで拡大)
 

当たり前すぎて、なんでもないもの、町中に落ちているゴミといわれるものであっても、観察し、発見する力を持てば、ワクワクすることは可能であり、そこに人間がものをつくりだしてきた歴史が凝縮しているはずです。

安価で誰もが手に入れやすく、想像力と観察力のスイッチを与えてくれる「コピー用紙」は、僕の目には神さまが潜んでいるようにみえるのです。



次回は小玉 文さんの予定です。
(2021年11
月5日更新)

 

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