●エプソンSC-P5050 製品問い合わせ先
SC-P5050(エプソン)http://www.epson.jp/products/largeprinter/scp5050/
ソフトウェアRIP(株式会社ソフトウェア・トゥー)http://www.swtoo.com/efi/
▲エプソン「SC-P5050」。298,000円。(クリックで拡大)
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▲本体前面の左右に11色の専用インクを収納。左側に特色用のインクが入る。(クリックで拡大)
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▲RIPソフト「EFI Fiery eXpress」の操作画面。(クリックで拡大)
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●イラストからデザインまで
--:まず大西さんのこれまでの経歴をお聞かせください。
大西:もともと、美大で油絵を学んでいたので、現代美術のアーティストになりたかったのですが、経済的にもけっこう困難な道ですから、絵は描けるのでそれでひとまず仕事ができないかとLPレコードジャケットサイズのイラストを描いて、家具店やセレクトショップなどに卸していました。その流れで、アパレルブランドとかのTシャツのグラフィック制作をするようになりました。
そこからデザインの仕事も増えてきて、そしてイデー(IDEE)の創業者でプロデューサーの黒﨑輝男さんと出会ったことでさらに仕事の幅も広がっていきました。東京・青山にあるFarmer's Marketのイベント関連のビジュアルや「NORAH」という雑誌、「TRUE PORTLAND」というガイドブック、ホテルのブランディングなど多くのプロジェクトに参加させていただいています。現在は様々なクライアントとブランディング、エディトリアル、広告、書籍など幅広くやっています。相変わらずTシャツも作っていますが。
--:デザインも行い、イラストも描く。多才ですね。ちなみに絵はどのように描いていますか?
大西:いきなりペンタブレットで描き始めるときもあれば、鉛筆、色鉛筆から描く場合もあります。イラストは自分のテイストを打ち出すというより、そのデザインに合ったイラストを描くようにしています。1人の絵描きとは思えない幅のある絵を描いているつもりです(笑)。
そもそもイラストレーターになろうとはあまり思ていなかったんだと、たぶん1つのことをずっとやり続けるのが向いていないだと思います。イラストレーターはどうしても作風やスタイルに縛られてしまいますが、自分はそれを決めきれなかったところもありました。
▲イラストもデザインも行う大西真平さん |
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●大西さんのデザインのワークフロー
--:デザイナーとしての活動ですが、色にはこだわる方ですか?
大西:ちょうど今、カタログを作っていて、本機校正が上がってきたばかりなんです。今回は4色で中面を刷って、表紙はラッピングペーパーに特色1色で刷りました。中面で使った4色掛け合わせの「赤」をターゲットに調色して、特色にしてくださいと指示したら、ぜんぜん違う「赤」で校正が出てきて、ちょっとがっかりしています(笑)。
表紙と中面を同じ「赤」の世界観で統一したかったので、色校のやり直しです。色が統一されていない、つまりデザインの構造が壊れているので、これでは意味がないです。
クライアントによってはデザイナーが印刷会社を指定することが難しいので、今回のように初めてのやり取りの場合、こういったトラブルが発生することもあります。
--:デザインでは特色を使う方ですか?
大西:使いますね、めちゃ使います(笑)。例えば商品タグなどは必ず特色使います。大量に作るので版数を減らさないとコストが上がってしまうからです。
--:特色使う理由は第一にコストですか?
大西:それと、色として、4版の掛け合わせより絶対強いじゃないですか。4版+特色を使えればなおよいですが、それをできるのはけっこう予算に余裕のあるクライアントなので(笑)、意外と少ないですね。見積もり取ってあきらめることも多いです。
--:例えば特色2版+黒の3版などにすれば、版数が減るのでコスト削減できる上に、特色で強い色を使えるのでクライアントに受けるかもしれませんね。
▲大西さんの作品より。特色2色を大胆に用い、色面を大きく見せた「自由大学祭のポスター」。上が印刷物、中がSC-P5050のプリントアウト。下はRIPソフトで特色を変えてプリントアウトした。(クリックで拡大) |
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▲SC-P5050によるプリントアウトと実際の印刷物をじっくり比較。 |
●SC-P5050を使ってみて
--:今回、大西さんのデザインワークをSC-P5050でプリントアウトしてみましたが、出来栄えはいかがでしたか?
大西:小ロットの成果物であれば、プリントアウトをそのまま使えるレベルのプリンタですね。紙の質感を重要視しないのであれば、本当にこのまま最後のアウトプットでも問題ないクオリティです。
--:特色の再現率はいかがでしたか? イメージどおりでしたか?
大西:印刷物と比べても遜色ないです。黒のリッチさが印象的ですね。
それと、RIP上で特色を指定し直すだけで、配色をあっという間に変えられのも便利ですね。それと僕は、デザインで中間色を使うことが多いのですが、4色分解で作った中間色って弱いじゃないですか? ところがSC-P5050から出力された中間色は強い印象です。
--:たしかにすっきり、くっきりした印象です。
大西:SC-P5050があれば、色面を生かしたデザインがしやすいです。特色の色面の美しさがシンプルに生かせます。それと小さな特色のチップだけではなかなか色面全体をイメージできないので、パソコン上だけではなく、すぐに出力して全体のイメージを原寸で確認できるのも魅力です。
--:実際のプリントアウトでも色面が強く出ています。
大西:SC-P5050の出力を見て、デザイナー、服飾系、建築系、編集者などみどり荘のクリエイターたちも興味を持っています(笑)。プルーフとしてはもう最高ですよね。これでプレゼン行けたらクライアントも驚かれると思います。
それと小規模のイベントなどの仕事がいっぱいあるので、SC-P5050でポスターをそのまま打ち出して使いたいです。ただ屋外に貼るポスターの場合はプリントアウトにラミネート加工などが必要かもしれませんね。
--:ワークフロー的にも効率アップが期待できそうです。
大西:僕はポスターなどのプレゼンの時、街の出力サービスを使っているのですが、それをSC-P5050でできるようになれば、良いですね。
やはり特色の再現性が高いので、SC-P5050のプリントアウトを見てもらえれば、特色のメリットをきちんと伝えられると思います。クライアントは特色イコール高いっていうイメージを持っているのですが、その辺も説得しやすいかもしれません(笑)。
それと、RIPですぐに特色を変えられるので、複数の特色を指定をしておけば、いちいちすべての配色パターンを作らなくても1つのデータで済みます。これも生産性や時間コストの節約につながると思います。
●SC-P5050と印刷物の違い、導入のメリット
--:実際にSC-P5050を導入するとして、何か気になる点はありますか?
大西:そうですね、デザイナーってけっこうオフセットフリークなんですよ(笑)。オフセット印刷がみんな大好きなんです。そういった印刷マニアから見ると、インクジェットは、別物的な扱いになってしまうかもしれません。
--:確かに印刷とは異なりますが、別物としての可能性も大きいと思います。
大西:そうですね、もし成果物を想定してオフセット印刷とSC-P5050を比較するとしたら、やはり紙のことが気になります。インクジェットで非塗工紙に対しての印刷が可能であればよいのですが。実際は、塗工紙仕上げの仕事はほとんどないです。屋内用広告ポスターであればもちろんこのままいけますけれど。
--:紙にこだわる?
大西:日本には、紙に印刷する文化が海外より残っていると思うのです。何故紙にこだわるかというと、印刷物はモノとして取っておきたいという文化からきていると思います。紙ってすごく重要ですから、SC-P5050はそこが課題だと思います。
--:SC-P5050に印刷できる紙の選択肢が広がれば、また違う展開があるかもしれませんね。
大西:やがてインクジェットも進化して、非塗工紙対応や耐水性の問題がクリアされて来れば、小ロットであれば、オフセット印刷は不要になってくるかもしれないですね。
SC-P5050で利用可能なプリント用紙
●エプソン純正 大判インクジェットプリンター用紙
http://www.epson.jp/products/supply/shoumouhin/paper/ooban_paper.htm
●ソフトウェアトゥー プルーフ&グラフィックアート紙
http://www.swtoo.com/paper/
●Tooインクジェットマテリアル
http://www.too.com/ijml
●ピクトリコ プルーフシリーズ
http://www.pictorico.co.jp/system/contents/1045/
--:大西さんのデザインのワークフローにSC-P5050が入り込める余地はありますか?
大西:SC-P5050は特色印刷が完全にクリアされていますし、スピード感が全然違うので、デザインの現場に入り込める余地は十分あると思います。プレゼンボードの作成や本機校正ではない色校、色見本などには欠かせない存在になる可能性があります。仕事によっては本機校正できない場合もありますので、SC-P5050で事前に確認できていればそのまま進めても安心感はあります。
--:導入して元は取れそうですか?(笑)
大西:例えば、特色のポスターを大量に依頼してくるクライアントなどがあれば、イニシャルコスト、ランニングコストも気にならないです。
もしくは写真のプリントもきれいなので、ギャラリーなどの作品展用にも利用できます。写真展の作品出力とポスターをSC-P5050で両方出力する使い方もできると思います。
--:特色が使えるカンプだけでなく、ポスターや写真出力の仕事も広がる。さまざまな分野で活用すれば、導入コストもインク代などもすぐに回収できそうですね。ありがとうございました。
2017年10月、東京・目黒のMIDORI.so NAKAMEGUROにてインタビュー。
(2017年12月26日更新)
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