●佐賀県の「新規就農促進」プロジェクト
・はじめまして
みなさんは佐賀県というとどのようなイメージをお持ちでしょうか。
全国各地「地方創生」をキーワードに、さまざまな取り組みがされていますが、佐賀県も例外ではなく、地域課題に対し多くの取り組みが活発に行われています。
にも関わらず、佐賀県の認知度やイメージはまだまだ。どこにあるかすら分からないと、耳の痛くなるような意見をいただくこともあります。私は、そんな佐賀県に生まれ、Uターン独立し、現在佐賀を拠点に活動しています。大事にしているのは、「本質」を忘れないこと。
・与えられた課題
本年度、私は佐賀県が抱える大きな課題に挑戦しました。佐賀県より与えられたミッションは「新規就農促進」。
農業をはじめとした一次産業は、少子高齢化の多大な影響を受けています。600万人いた全国の農家は、この30年で190万人にまで減少しました。佐賀県は全国2位の農業県ですから、この状況は決して軽視できるものではありません。最近では、消費者と生産者がシステムで分断され、農業がブラックボックス化されているなんて言われます。この衰退する農業に対し、新規就農促進。つまり、Webで農家を増やせ! という課題です。途方に暮れました。
・なぜ農家が減るのか?
机上でいくら考察しても、解決の糸口はまったく見えてきません。私は、数十軒に及ぶ農家さんを訪ね、現場の状況などリアルな話をヒアリングしました。「息子には農業やらせたくない。東京で働いてくれた方が安心」なんて話が農家さんの口から出てきた時には、もう絶望感でいっぱい。その晩、日本酒を腹一杯飲んだ記憶があります。
汚い、臭い、稼げない、結婚できない、かっこ悪い。世間での農業は5Kなんて揶揄され、現実も一緒。少子高齢化はもちろん、この資本主義に基づく消費社会が農家を疲弊させ、結果的に離農や農業人口減少につながっている構図こそ、私がたどり着いた農家が減る本質でした。
多くの農家をヒアリング。(クリックで拡大) |
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・多様な働き方の時代の、多様な農家
しかし、絶望だけではありません。農家さんを訪ねる過程で、この難しい農業というフィールドで、圧倒的な活躍と成功を収めている方にも出会います。それは、農業のこれからの多様性、どこで、何の作物を、どのようにやるかの選択により、農業にも多くの可能性を秘めていること。東京で働くサラリーマンよりも、心身共に豊かな生活を築き、もちろん経済的にも安定した農家さんでした。
・コンセプトは「図鑑」
私は、県内で活躍する農家さんをロールモデルとした、ブラックボックス化された農業を可視化する「図鑑」というコンセプトを立てました。いい側面だけではなく、厳しい側面も含め、農業という仕事、佐賀県の農作物(選択肢)をグラフィカルに表現すること。目指したのは、農業に興味のある方にとってあくまで実用的な、これからの農業の多様性と可能性を示すオウンドメディアです。
・地域性をイラストで再現する
農作物には、地域や品種による些細な違いがあります。イラストの細部には、その些細な違いを忠実に「佐賀」を表現。
細部に佐賀の地域性を現したイラスト。(クリックで拡大) |
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・現場以外の「暮らし」を見せる
現場が軸となった農業のある暮らしには、他の職業にはない独自の豊かさがあります。映像には、その「暮らし」の部分まで取材を行い、農業という仕事を表現しました。
・これまでの反響
2018年の8月にWebを公開し、月に1度を目処に生産者を特集し掲載しています。バズったり、大きな反響はありません。しかし、サイトを閲覧したユーザーが営農に関し生産者に直接問い合わせたり、研修生として移住したケースがいくつも生まれました。これからの佐賀には、もちろん佐賀県自体を認知してもらう話題性のあるPRも必要ですが、課題の本質に目を向け、地に足のついたブランディングが重要だと考えながら活動しています。
Producer / Creative Director : 稲田 諭
Art Director / Designer : 中山 智裕
Copy Writer : 岡 優一
Photographer : 水田 秀樹
Movie Director : 水田 秀樹
Videographer : 菊池 裕太
Movie editor / アイウラ ショウタロウ
Web Director : 稲田 諭
System Engineer : 横尾 直和
Illustrator : SYNC &Collective.
次回は中山智裕さんの予定です。
(2018年11月20日更新) |