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Portfolio NOW!

このコラムでは、毎回1人のデザイナーに旬のデザインを見せていただき、その作品作りのきっかけ、コンセプト、世界観、制作テクニックなどを語っていただきます。リレーコラムですので、掲載クリエイターには次の方にバトンを渡していただきます。

 

Designer FILE 45

長田敏希

株式会社ビスポーク代表取締役 CEO、 東京農業大学非常勤講師 地域ブランド戦略領域、一般社団法人フードサルベージ代表理事、クリエイティブディレクター、アートディレクター。クライアントとの丁寧なヒアリング(対話)を重視しながら、組織の理念作成からBI(ブランド・アイデンティティ)開発、内外に向けたクリエイティブ開発まで、クライアントが対面している状況、市場環境を加味し、企業に合わせた隅々までフィットするコンサルティングを提供。世界三大広告賞のカンヌライオンズ、The One Showをはじめ、D&AD、NY ADC、iFデザイン賞、グッドデザイン賞、毎日広告デザイン賞など国内外の受賞多数。テレビ朝日「お願いランキング!嫉妬に身を焦がすBAR」出演

http://bespoke-inc.jp





●お米を売りながら地域の魅力を売る「能登輪島米物語」


「能登輪島米物語」(クリックで拡大)


「横文字ナシ」、「体験型」のワークショップで想いを汲み取る

石川県輪島市と輪島のお米農家9社の連携で生まれた「能登輪島米物語」。それぞれ9種類のお米には、「ゆきわり草米」、「そうじ寺米」、「キリコ祭り米」などという風に、自然環境や建築物、祭りごとなど、地域の観光資源の名前がつけられています。

この商品開発プロジェクトは、お米を生活者に直接売りたいというお米農家たちが手を携えて2014年にスタート。一人ひとりのお米農家の想いをのせた商品をつくるため、私たちの会社Bespoke(ビスポーク)に商品開発のお声がけをいただき、さっそく輪島市内でワークショップを行いました。 会場に炊飯器をずらりと並べ、9社のお米農家が作る9種類のお米、一般的に評価が高い新潟県の魚沼米、スーパーで最安値だったお米の計11品種を、品種名や生産者名などを隠して食べ比べることから始めました。


体験型ワークショップで、お米を食べ比べてもらう(クリックで拡大)

お米農家たちは自分のお米しか食べないという方が多いので、まずは他のエリアを知ってもらおうという狙いです。食べ比べをすることで、自分たちの立ち位置や一般のお客さんの感覚を理解してもらい、その上で、自分たちの商品をどのように作っていくかを考えていく。そのスタートラインに立つためのワークショップです。

弊社では、ブランドコンセプトを作る際には「競合(Competitor)」、「自社(Company)」、「顧客(Customer)」の視点を考える「3C分析」を行い、同時に「ビジョン」、「ミッション」、「バリュー」の3つをヒアリングしていきます。

とは言え、お米農家たちは60代がほとんどで「ブランディング」、「コンセプトデザイン」といった言葉に馴染みがありません。そこで、“横文字アレルギー”にならないよう、まずはブランディングについて横文字を使わずにかみくだいて講義したほか、「ビジョン」を「目標」に言い換えるなど、馴染みのある言葉で進めていきました。さらに、食べ比べのように体験型にしたり、意見を言うときは付箋に書いてから発言するなど若手農家やシャイな農家も意見を出しやすいように配慮したりしながら、それぞれの想いを丁寧に汲み上げていきました。

「甘い」、「香りが違う」、「さっぱり」、「あっさり」、「臭い」、「もちもち」、「つやがある」、「おかずと合う」…というように、ワークショップでは食べ比べた感想を付箋に書き出していき、さらに、5ツ星お米マイスターにも同じお米の評価をもらいました。そして、「一般のお客さんはお米の味の違いを明確には分からないのでは」という結論にたどり着きました。

試食した感想をもとにコンセプトを固めていく(クリックで拡大)

その後のワークショップでは、お米農家たちに「あなたが30代主婦だったらどんなお米を食べたいか」、「あなたが50代男性だったらどんなお米が食べたいか」など、食べ手に視点を変えてイメージしてもらいました。

お米農家たちは生産や経営の立場から、どれだけ売らなければならないか、どうこだわっているかなど、苦労を前面に押し出しがちです。しかし、お客さん側に頭を切り替えると、どんな味わいか、どんな想いが込められているか、どういうシチュエーションで買うか、どんな人にあげようかなど、別の視点に気がつくのです。こうした“考えるための仕掛け”を散りばめることで、お米農家たちはとことん掘り下げて考えることができました。

お米だからこそ商品が「地域づくり」につながる

こうした作業を経た後にお米農家たちに「想い」や「目標」などを聞いていくと、ただ単純にお米が売れて商売として儲かれば良いだけではないことが見えてきました。「高齢で跡を継ぐ人がいない。農家になりたい若者を増やせる取り組みにつながれば」「輪島の観光と組んでいける取り組みにつながれば」など、お米を売るための商品開発が輪島の“地域づくり”に結びついてほしいという声を引き出すことができました。

ワークショップを経て、一般のお客さんがお米の味の違いを明確に分からないのであれば、輪島にたくさんあるお米に合う「おかず」や、自然環境や祭りごとなどの「観光」をセットで売っていくのはどうだろうという意見が出ました。輪島は海も山もあり、お米に合うおかずが豊富です。お米とおかずで輪島の魅力を発信したい、お米を食べながら輪島を旅してもらいたい、というテーマが浮かびあがってきたのです。

お米農家の「競合」は「広義では日本全国のお米」で、「狭義では能登輪島の特産品」でした。一方で、他にはない「能登輪島の恵まれた環境」という魅力を打ち出すことで、日本全国のお米に勝ち得る“武器”を持つことができました。そのうえ「必ずおかずと一緒に食べる」というお米ならではの特徴にスポットを当てることで、能登輪島にある数々の特産品という「競合」を「味方」につけるといった、これまでにない商品展開につながりました。

2度のワークショップを経て「おかずで旅する輪島のお米」というコンセプトが生まれました。商品は、2合入りの真空パックで、キューブ型の箱入り。9種類それぞれの箱の正面にはお米農家たちが大事にしたい能登輪島の自然環境や祭りごとの風景を描き、一方の側面にはそれぞれのお米農家の似顔絵と想い、もう一方の側面には「岩のりの佃煮」、「ナスの舟焼き」、「鯖の糠漬け」といったお米農家が薦めるごはんのおかずが描かれています。9種類の箱を並べるとそれぞれの風景がつながり、その中には、ご飯茶椀を片手に旅をしている人物のイラストを入れ込んでいます。このパッケージのように輪島塗のご飯茶椀で、ごはんとおかずを楽しみながら輪島を旅してもらおうと、今後はツアーも開催していくそうです。


「おかずで旅する輪島のお米」をコンセプトとしたキューブ型パッケージ(クリックで拡大)

ロゴマーク、ブランドコンセプト、パッケージなどの“戦略”がそろった今後は、“戦術”を展開していくステージです。ブランディングは作って終わりということではありません。想いをどう広げていくかが重要なのです。Bespokeは継続してプロモーションのサポートも行っています。

お米農家とのワークショップを経て生まれた「能登輪島米物語」は、お米の販売を通して能登輪島の地域づくりにもつながる。そんな新しいお米の可能性を秘めた注目の商品です。


全体のパッケージ(クリックで拡大)




次回は稲田 諭さんの予定です。
(2018年10月18日更新)

 

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