●日本の文化・ものづくりの精神を伝えるカレンダー
「2017Calendar ORIGAMI」
製造機械と金型を生産販売している企業の海外販促向けのカレンダーを制作しました。お題は「日本の文化とものづくり」。モチーフは折り紙を選びました。
・型から形へ
今や世界中で人気のある折り紙は、平面的な紙から、折り方によって鶴や紅葉などさまざまな立体的な形が生まれます。その形を決めているのは折り方であることから、この折り方によって生じる折り筋に着目しました。完成した折り紙をまた平面の紙の状態に戻すと、綺麗な幾何学模様が紙に残されています。
その形、幾何学模様の美しさをカレンダーの絵柄にしたいと思い、折り筋模様の押し型を作成し、紙に筋押し加工を施しました。型を用いて形をつくるというこのカレンダーの特徴は、クライアントの事業内容とも一致しており、大変好評価でした。
写真1:カレンダーの表紙。(クリックで拡大) |
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写真2:3月のカレンダー。(クリックで拡大) |
・カレンダー制作について
紙の色、折り紙の完成した形によって季節感を表し(例:3月は赤い紙で椿がモチーフ)、折る前も、折って完成した時にも、より立体的に美しく見えるように、金・銀・パールニス・ホワイトを駆使した印刷をしました。
カレンダー玉(数字)部分は箱組み3ヶ国語表記で週番号も記載し、実用的なものにしました(海外配布用なので月曜始まり・祝日表記なしです)。
折り紙部分と玉台紙部分2枚でひと月という構成で、表紙と奥付けを併せて26枚ものです。ヘッダー(上部綴じ)部分にはマイクロミシンが入っており、折り紙をめくり切り取る際にはバリが出ず、綺麗な正方形になります。めくった裏側台紙部分には銀ベタ白抜きの折り筋模様を印刷して、いつ折り紙部分をめくってもいいようにしました。
ワークフローとしては、今回自身ではほとんどデザインアプリケーションでの作業はせず、版下的なラフでのデザイナーさんへの指示書作り、校正刷りへの朱書き、立合いでの現場調整での制作が中心でした。パソコンのモニター上では仕上がりが見えにくい仕様だったので、その場での工夫や判断で進行していくことになり、常に緊張感がありました。
出来上がりの方向性が決まった段階で、デザイン、印刷、紙、加工の各工程責任者で集まり、セクション間で生じるであろう問題を事前に摺り合わせ、解決策を議論し、各自しっかりやりましょう! という会議をしたことで、非常に円滑に進行したと思います。
写真3:台紙部分の銀ベタ(ダブル)白抜き印刷。(クリックで拡大) |
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写真4:本文筋押し加工の部分拡大図。(クリックで拡大) |
・印刷加工の職人の技
パッと見出来上がったものはシンプルな印象のカレンダーですが細部の印刷加工の精度が凄くてたまげます。
12種類の紙色に対して同じ印象に見えるようにインキの配合を微妙に変えたり(印刷機を回しながらインキ壺に色を足して刷り色を変えていくのは驚きでした)、印刷濃度を細かく調整したり、印刷時の紙の伸縮を極力抑えるため、クワエ(印刷機の中に紙が入っていく方向)を絵柄によってそれぞれ指定したり、断裁時に台紙と折り紙のキワがズレないようにそれぞれの小口に特殊なトンボを打ったり、押し筋も紙色によって深度が均一に見えるようにマイクロメートル単位の調整をしたり、約2000部もあるのに帳合いと綴じを手作業にしたり、とても工夫に満ちていて根気強く丁寧な作業でした。こういったところにも、「日本のものづくり」の精神が宿っていると思います。
熟練の職人の方々が「こりゃーやってみなけりゃ分かんないな!」なんて言いながら試行錯誤を繰り返し、なんだかんだ言いながら、とても素晴らしいものに仕上げてくれました。やってみなけりゃ分かんないものを作っていくのは楽しくも責任と表裏一体、とても恐ろしくてドキドキしてしまいますが、その分上手くいったときは大変感動的です。
本当はもっと安心しながら作っていきたいけれど、またやってみなけりゃ分かんないものに手を出してしまいそうです。
写真5:折り紙を展開したラフ(版下指示書)。(クリックで拡大)) |
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写真6:最終刷り本。(クリックで拡大) |
写真7:筋押し型。(クリックで拡大) |
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写真8:型と押し機(抜き機)(クリックで拡大) |
次回は山田知子さんの予定です。
(2017年3月17日更新) |