●阿部蒲鉾店「阿部の笹かまぼこ」のパッケージリニューアル
・老舗感を残しつつ、新しい世代にも親しみやすいデザイン
みなさん「笹かまぼこ」ってご存知ですか? 古くは明治時代からある仙台の名産品です。その笹かまぼこの名付け親でもある「阿部蒲鉾店」さん(http://www.abekama.co.jp/)より、若い人にも手に取ってもらえるようなパッケージにリニューアルしたい! と依頼がありました。
なんと創業から80年にして初めてのリニューアルとのこと! 当時入社2年目の身には重すぎるほどの大役でした。
仙台市内には笹かまを販売する店が阿部かま以外にも数多くあり、「仙台の銘品」「昔ながらの味」など、歴史の深さをコンセプトにしたデザインが多くありました。仙台土産にこれを買っておけば間違いない! と、みんながうたうため、売り場は常に笹かま激選区。その中でも阿部かまの最大の特徴は”元祖”であること。「老舗感を残しつつ、新しい世代にも親しみやすいデザインテイスト」を目指し、パッケージ制作をはじめました。
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写真1:仙台の阿部蒲鉾店。店頭でガチャイベント開催時。(クリックで拡大) |
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・古くならないデザインの追求
特にパッケージデザインをする際は、まず初めに商品を擬人化します。そうすることでデザインを組む際に迷いがなくなるからです。阿部かまは「一歩後ろに下がって人を立てつつ、でもきちんと自分の考えをもつ芯のある女性(30代)」にしました。初めてここで公表しました。チームの誰も知りません(笑)。
この先10年、20年パッケージが残ることを考え、デザインはシンプルに。「古くならないデザイン」の追求がはじまりました。歴代の美しいパッケージをトレースしたり、実際に購入して手にとってみたり、徹底して研究を重ねました。
最初は「笹かまぼこ」そのものをモチーフにデザインを組み立てようとしたのですが、なかなか特徴が出せず。そこでヒントになったのが、阿部かまの持っている「ハサップ」という特許です。端的にいうと「ずば抜けて魚の鮮度が良い」しるしをもっていたのです。デザインチームで魚のアイコンをいくつか草案、最終的に金色の魚のマークがキラリと光るデザインに定着しました。
書体も「阿部」の文字に少し隙間をあけることで、名前の印象が残るように調整しました。さまざまな年代の方に見ていただき何度もチューニングを重ね、ついにデザインが完成! でもパッケージって実は製版がスーパー重要! 版画が図案、彫り、刷りと合わせて出来上がるように、形になるまでがパッケージデザインなのです。
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写真2:小分けされた「笹かまぼこ」のパッケージ。(クリックで拡大) |
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写真3:右下の金色の魚のマークがキラリと光る。(クリックで拡大) |
・刷り立会い
阿部かまさんと打ち合わせを重ね、パッケージの紙は白い和紙に。この和紙がなかなかコントロールがきかず…本当に苦労しました。印刷所の方に何度も調整していただき、インクの濃度を変えたり、刷りの圧を変えたり。特に魚の「金色」をイメージ通りに出してもらうのには大変時間がかかりました。この金色のさじ加減でパッケージの品質がものすごく変わるんです。世の中の金色インクを使ったデザインを見ると、「お前も苦労したんだな」と声をかけたくなるほどでした(そうとは限りませんが)。
正確には数えていませんでしたが、おそらく10回ぐらい校正を重ね、ついに完成! 印刷所のみなさま、本当にありがとうございました!。
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写真4:他のほぼすべての商品のパッケージデザインも制作。(クリックで拡大) |
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・パッケージデザインのゴールは遠い
当初はメイン商品1点のご依頼でしたが、気がつけばほぼすべてのパッケージの制作をさせていただくことになりました。包装紙や紙袋も制作し、2014年から約2年間にわたる笹かまプロジェクトとなりました。 ADとしてお誘いいただいた田中さん(http://pops-inc.jp/)には大変感謝しております。またとない貴重な機会をありがとうございました。
今思えば若輩者のいうことを真剣に聞いてくださった阿部かまのみなさま、本当にありがとうございました。この先私がおばあちゃんになってもこのデザインが変わることなく存在し続けたならば、これ以上の幸せはありません。パッケージデザインは販売してから勝負、ゴールはまだまだ先です。
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写真5:笹かまぼこの詰め合わせ。(クリックで拡大) |
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写真6:阿部蒲鉾店の商品詰め合わせ。(クリックで拡大) |
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写真7:阿部蒲鉾店の包装紙。(クリックで拡大) |
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写真8:広告用ビジュアル。(クリックで拡大) |
次回は吉田早希さんの予定です。
(2017年1月13日更新) |