●京都のお香の老舗「薫玉堂」のキャンドルパッケージ
・日本最古の御香調進所「薫玉堂」
京都の西本願寺前で「文禄三年(1594年)」創業以来、儀式の場や日常の中でその時代の香りを作り続けてきた、「日本最古」のお香の老舗のブランディングにまつわるデザイン。
現代の生活に寄り添った新しい香りのかたちも提案されているので、老舗の品格を保ちつつ、洗練したデザインにする必要がありました。「伝統」と「新しさ」の相反する魅力を融合させ、引き出すことに挑戦したお仕事です。
・そのもの「らしい」かどうかを必ず考える
マークには、薫玉堂が持つ長い歴史や、品位あるお香だということ、本格的なものづくりを示すことを目指し、あえて薫玉堂に昔からあったお香立てのマークをそのまま活かしながら、形状を整えて使うことをご提案しています。それが一番「薫玉堂らしさ」を演出できると考えたからです。(写真1、2)
写真1:昔からのマークを活かす(クリックで拡大) |
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写真2:薫玉堂の紙バック(クリックで拡大) |
そこで、「パッケージ」で新しい魅力を演出することが非常に重要である、と考えました。ご依頼があった商品は「お香」と「キャンドル」「マッチ」。今回は「キャンドル」をご紹介したいと思います。
日本のお香と聞くと、中には「お線香」をイメージしてしまう方も多いと思います。仏事のもの、という印象を与えてしまっては、ブランディング上、大きなマイナスになってしまいます。
特に「洋」なイメージのあるキャンドルのパッケージをデザインするにあたり、420年以上もの歴史を持つ京都の老舗、という歴史に支えられた「信頼感」と老舗ゆえの「高級感」はそのままに、洗練され、スタイリッシュなものに見せるにはどうしたらいいか考えました。完成したデザインがこちらです(写真3、4)。
写真3:完成したデザイン(クリックで拡大) |
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写真4:5色のバリエーション(クリックで拡大) |
移りゆく時代を香りで表現したキャンドルです。794(平安時代)などと、年号が商品名になっています。時代の流れに従って香りが和から洋へ移行していく様や、トップノートからラストノートまで移ろいゆく香りをイメージしたグラデーションで表現しました。老舗感のあるロゴを配置しながらも、品のある綺麗なパッケージが仕上がりました。。
・大事な「こだわり」のこと
この「グラデーション」の箱に至るまでには、いくつもの検証を重ねています。最終形にほぼ近いラフがこちらです(写真5)。
写真5:ほぼ最終形のラフスケッチ(クリックで拡大) |
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箱の形状や素材の検証、色検証、レイアウト検証、書体検証…あらゆる角度からの検証をし、すべてベストである理由を見つけた上でご提案をすることを、どの仕事でも徹底しています。
そして検証はデザイン決定後にも続きます。good design companに入社してからとても驚いたのは、校正も基本的には紙や色味、仕様を最低2パターン以上は出して検証する点です。和紙が予算に合わなければ和紙「風」のデータを作ることもあります。印刷会社さんも、難題に対していつも楽しそうにチャレンジしてくださり感謝にたえません。
「デザイン」が世の中へ与える影響は思っている以上に大きいです。私たち「デザイナー」は、色味や紙のことに留まらず「デザイン」や「デザイナー」の本当の効果や価値をもっと理解し、それを生むための「こだわり」を強く持って制作に臨まなければいけないと強く感じます。
認知度を上げるため。売り上げを上げるため。集客を増やすためなど…本来「デザイン」には必ず、達成すべき目的があります。目的地を目指して、クライアント様はもちろん手に取ってくださる方、見てくださる方にきちんと評価をしていただけるよう細部にも手を抜かずに、丁寧なものづくりをしていきます。
薫玉堂
創業文禄三年(1594年)、420余年の伝統を受け継ぐ京都・西本願寺前の香老舗。
http://www.kungyokudo.co.jp/
次回は浜田智子さんの予定です。
(2016年12月15日更新)
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