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 Part.5 「ライカS2」試用レポート

常盤響 
1966年東京生まれ。写真家、グラフィックデザイナー、DJ。学生時代からライター、イラストレーターとしての活動をはじめ、1990年代に入ると、グラフィックデザイナーとしてCDジャケットを中心に活動。1997年、阿部和重の小説「インディビジュアル・プロジェクション」の装丁用をきっかけに写真を撮り始める。現在は、写真家としての活動が中心。写真集に『Sloppy Girls』(新潮社) 、『Freedom of Choice』(河出書房新社)、『GirlFriends』(小学館)など。


中判デジタルカメラ特集の最後のPartとして、常盤響氏によるライカS2の試用記をお届けしよう。普段デジタル一眼に広角レンズで女性モデルを撮ることの多い常盤氏だが、ライカS2はどのようなインプレッションだったのだろうか? デザイン、操作性、画質などを率直にまとめていただいた。

ライカS2
一体型中判デジタルカメラ
2,625,000円(ボディのみ)
コダック製3,750万画素CCD搭載
※詳細は以下のPart1まで
http://procameraman.jp/Special/201005_sp_part1.html#_06

■ライカの魅力に誘われて

今まで機材の試用記など書いたことがない私ですが、つい引き受けてしまったのもライカのS2に興味があったからなのです。今まで、スタジオではハッセルブラッドやPhase Oneなどのデジタルバック式の中判デジタルカメラを使用したことはあるのですが、なんかどれもスタジオ機材のような感じがしてしまって、物欲の対象にはあまりならないのでした。そんな中で登場したライカのS2はデジタルバックのない一体型で、まるで、35mmカメラのようなルックスとサイズに大いに惹かれました。もっとも、中判カメラらしいすごみというのはあまりないので、クライアントに対する、高額なカメラを使っていると言うアピール度でいうと、他の中判ほどすごみがないとも言えます。まぁ、ライカのロゴはブランド力充分ですが。

■プロトタイプのようなフォルムと洗練された操作性

さて、実際に触ってみた感想からいきましょう。ボディはキヤノン1DsやニコンD3などと比べて、若干厚みを感じますが、少々小振りに見えるほどです。また、その厚みが僕的には持ちやすく、グリップもなかなか握りやすくバランスも良く感じました。持っただけで、頑丈さが分かるような質感もいいですね。重さも、片手で振り回すというわけにはいきませんが、充分フィールドに持ち出せるぐらい、軽いイメージです。

そして、そのデザイン。あまりにもシンプルで、まるでモックアップのプロトタイプのデザインをそのまま製品にしたかのような雰囲気で、僕的にはカッコイイのですが、これは好き嫌いが極端に分かれる気がします。上面には大きなシャッタースピードのダイヤルと縦長の小さな液晶パネル。シャッタースピードをアナログのダイヤルにしたのは個人的に大歓迎ですし、デザイン的に良いアクセントになっている気がします。

上部ディスプレイは小さな縦長で黒字にカラーで文字が出る洒落たデザインですが、グラフィカルで大きなディスプレイを見慣れた人には物足りなく感じるかもしれません。でも、このディスプレイは有機ELを使っていて、カラーとデザインの感じが、隣のダイヤルと合わせて非常にアナログな感じになっていて個人的には好みです。背面も本当にシンプルで、パワースイッチとダイヤル、3型の液晶のまわりに配置された4つのファンクションボタンだけ。このファンクションボタンとダイヤルですべての設定を行うのだけど、慣れるまで少し戸惑いました。しかし、この方法に慣れてしまえば、かなり早く操作できるようになる気がします。

■写真が楽しくなる光学ファインダー

それでは、ファインダーを覗いてみましょう。とにかく、ファインダーを覗いた時が一番衝撃がありました。昔、35mmのフィルムカメラを使っていて初めて中判カメラを買ったときのようなといいますか、ぱっと目の前が開ける感じと言いますか、とにかく見やすく、このファインダーを覗いただけで写真を撮るのが楽しくなる気がします。

ピントの山もつかみやすく、マニュアルでピントを合わせるのも非常に楽です。最近では、ライブビューでピントを合わせる人も多いそうですが、このファインダーを見てしまうと、やっぱりカメラは光学ファインダーだなぁ…と改めて思うのでした。AFも他の中判カメラと比べても速い方ではないでしょうか。

今回使用したレンズは70mmの標準レンズだったのですが、70mmレンズのピントリングの感触は素晴らしく、滑らかですが、しっかりした重さもあり、先ほど書いた良好なファインダーと合わせて、マニュアルでフォーカスを合わせるのが楽しくなるようでした。

■室内の自然光でモデルをテスト撮影

露出時間 : 1/90秒 レンズF値 : F2.8 ISO感度 : 160
レタッチ処理済み →オリジナル画像
(クリックで拡大。ファイル容量:約17.4MB)


露出時間 : 1/90秒 レンズF値 : F3.4 ISO感度 : 160
レタッチ処理済み
(クリックで拡大。ファイル容量:約17.3MB)



露出時間 : 1/90秒 レンズF値 : F4.0 ISO感度 : 160など
レタッチ処理済み
(クリックで拡大。ファイル容量:約18.1MB)


露出時間 : 1/250秒 レンズF値 : F2.5 ISO感度 : 160
レタッチ処理済み
(クリックで拡大。ファイル容量:約16.6MB)


露出時間 : 1/180秒 レンズF値 : F2.5 ISO感度 : 160
レタッチ処理済み
(クリックで拡大。ファイル容量:約14.1MB)



さて、実際に写真を撮影してみましょう。僕は普段はほとんど人物撮影で、主に広角を使用しているので、70mmレンズということで、普段のスタイルとはいかなかったのですが、中判カメラの利用法として一般的なストロボをたいたスタジオ撮影ではなく、自然光を生かした部屋でのスナップ的な撮影をしてみました。部屋でカメラを構えると、気分的には35mmのカメラを構えているのとなんら変わりません。ミラーショックは他の中判カメラに比べると抑えられているような気がしますが、35mmカメラに比べると感触は強いように思います。ファインダーが良いので、写真を撮るのも楽しくなるような気がして、中判とはいえフィールドに持って行くのが一番楽しいのでは? と撮っていて思いました。個人的には、35mm f2.5のレンズでモデルに寄った動きのある写真が撮りたかったですね。

■首からぶら下げて持って歩きたいカメラ

撮影した画像を見ると、若干色味に味付けがされている気がします。他の中判カメラ(それほど数を撮っていませんが)のAWBにくらべてクセがあるというか。コダック社製のCCDを使用しているからと言うわけではないでしょうが、コダックのフィルム的な色味になっている気がします。普段はAWBを使うことはないので、あまりAWBの色忠実性にはこだわっていないのですが、これはこれでいいのでは? と思ってしまいます。多分、このAWBでの味付けは好き嫌いの大きく分かれるところではないでしょうか?

結論から言うと、スタジオ撮影だけに使うカメラではないような気がします。もちろん、スペック的には十分だし、スタジオで手持ちで動きながら撮るのも楽しそうですが、やはりフィールドに持ち出したり、旅に連れていったり、人物でも風景でも普通の35mm一眼のつもりで使うと、この高性能も生きるような気がします。もっとも、そんな楽しさを享受できるのは、お財布にかなり余裕のある方に限られてしまいますが。値段のことを考えなければ、かなり魅力的なカメラだと思います。減価償却とかそういうこと考えないで、ブラリと首からぶら下げて出かけたりしたいものです。


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