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 Part.4-1 メーカーに聞く「ペンタックス645D」の気になるポイント

今カメラマンの間でもっともホットな話題といえばペンタックス645Dだろう。編集部周辺でも、驚くような価格と性能を実現したこのカメラの話題で持ちきりだ。ただ、発売されたばかりで読者には気になる点もまだ多いのではないだろうか。そこでHOYA ペンタックス イメージング・システム事業部の前川泰之氏に、645Dについてその詳細を聞いた。

ペンタックス645D
一体型中判デジタルカメラ
オープンプライス(市場実勢価格80万円台)
コダック製4,000万画素CCD搭載
PENTAX 645AF2マウント
※詳細は以下のPart1まで
http://procameraman.jp/Special/201005_sp_part1.html#_07


■量産効果やローパスレスで100万円以下を実現

--発表をされてから発売までの反響はいかがでしょうか。
前川:受注の状況は我々が想像していたよりも相当多いです。正直、ここまでハイエンドのカメラに受注いただけるとは予想していませんでした。ご予約いただいた分は発売日にすべてのユーザー様にお渡しできるように、発売を延期したほどです。

--月産何台を計画されていますか。
前川:当初の生産台数は500台です。

--645Dを初めてアナウンスされたのはかなり以前のことになります。
前川:「中判のデジタルカメラを開発します」と初めてアナウンスしたのは2005年3月のPIE(フォトイメージングエキスポ)です。そのときは、異なるデザインのモックアップを3つ並べて人気投票を行いました。

--そこから一時中断のような形になったのはどうしてでしょうか。
前川:2008年頃、デジタル一眼レフカメラのK-7というAPS-Cサイズセンサー搭載のハイスペック機種を開発中で、社内的にその機種に集中したという事情がありました。645DとK-7を並列して開発を行うのはなかなか厳しかったのです。そこで2009年に改めて645Dの開発再開を宣言しました。

--ちょうどその頃、中判デジタル業界はメーカーの提携や買収などの話題が多く、縮小傾向のようにも思えたのですが、参入にあたり不安を感じませんでしたか。
前川:実は市場は狭まってないんですよ。当然全世界的な不況がありますから、それによる買い控えはあるのでしょうが、そんな問題がなければまだ需要がある市場だと考えています。

--645Dの最大の話題と魅力はなんといっても4,000万画素で100万円以下の価格を実現しているところだと思います。これまでの中判カメラユーザーからは「どうしてこの価格?」という話をよく聞きますが、何故ここまで低価格を実現できたのでしょうか。
前川:1点目は量産効果です。特に購入部品は数が見込めれば見込めるほど安く買えます。その結果、量産効果は大きくなります。2点目はフィルムの645をずっと作ってきたことで、中判のベースがありました。そこから使える部分はなるべく流用しています。部品単価は実はたいしたことはなくても、部品を起こすために型を作る必要があるためコスト面での影響は大きいです。3点目は、ローパスフィルターを搭載していません。主なユーザーターゲットは風景を撮る方なので、割り切ることができました。ローパスフィルターを外すことで十数万円では済まないぐらいのコストダウンができます。

--Mamiya ZDのローパスフィルターは約21万円、コダックのDCS Pro BackのAA filterもそれぐらいの価格でしたよね。
前川:はい。それぐらい高い部品なのです。あえてローパスフィルターを搭載しなかったというのはかなり低価格化に貢献しています。

話を聞いたHOYAペンタックス イメージング・システム事業部の
前川泰之氏

■ホコリ除去搭載で一体型を実現

--4,000万画素という仕様はどういった経緯で決まったのでしょうか。
前川:2005年に発表してからの5年間に「ここで発売できる」というタイミングがいくつかありました。画素数はその時点における「高画素」と言えるセンサーを選んでいました。最初は1,800万画素だったのですが、今考えると少ないですね。次に3,000万画素の時期もあったのですが、35mmフルサイズの現行機種はすでに2,400万画素を超えていましたから、これも差別化を図るにしては少なすぎます。最終的に、現時点で十分高画素と認識してもらえる画素数のセンサーを選択しました。

--当初発表されていたモデルではカメラバックを外せる仕様でした。現在は一体型ですが、どういう経緯で変更されたのでしょうか。
前川:もともとボディから外せたのは、ゴミ取りが目的だったのです。フランジバックがけっこう長いですから、外から清掃をするのはなかな大変ですよね。そこで、外れる機構を考えたのです。

--他社のカメラボディや4×5に付けられるということではなかったのですね。
前川:そのような考えはありませんでした。ゴミ取りの機構を実現しましたし、中判カメラを使っている現場にもいろいろヒアリングしたところ、接点不良による通信エラーに悩まされる例が多く、センサーの微細な位置ズレを防ぐためにもやっぱり一体型のほうがいいだろうという結論になりました。

--なるほど。RAWの記録ですが、ほとんどの中判デジタルのコンバーターは16ビットですけれども、何故14ビットになったのでしょうか。
前川:これは「した」というよりも「なった」ということです。16ビットのほうが有利なのでしょうけど、何でもかんでも突っ込んでいると、どうしても価格が高くなってしまいます(笑)。結果的に記録できる画はとても良質で、満足のいくものです。

--ライカのS2が同じ44×33mmのCCDを搭載して非常にコンパクトですが、645Dももっとコンパクトにできたんじゃないでしょうか。
前川:やはりフィルムの645と共通部品を使っているところもあったので、従来の645と一緒になりました。結構隙間があるので、詰めれば前後長の1cmぐらいは詰められるかもしれませんね。

--中判デジタルのCCDはCMOSと違って冷却ファンの騒音に悩まされることがありましたが、645Dは非常に静かなのに驚きました。
前川:645DはCCDが発した熱を熱伝導シートを介してシャーシーに逃がすように設計してありますので、ファンのような機構は設けていません。

--以前の中判デジタルといえばバッテリーで駆動させると撮影枚数は100~200枚が限界でしたが、645Dの800枚というのは驚異的な数字ですね。
前川:これには私も驚きました。商品企画としては「500枚は撮れるように」と開発部にお願いしていましたが、結果としてはさらなる省電力化を実現して800枚になりました。おそらくAPS-CのDSLRカメラをずっと作ってきた技術の蓄積によるものだと思います。

■デジタルでこそ本当の力が発揮できるFA645レンズ

--では、645Dのレンズの特徴、強みを教えてください。
前川:645Dと同時にデジタルに最適化したレンズ「D FA645レンズ」をリリースしました。それ以外にフィルム時代のペンタックス645やペンタックス67のレンズも使用できます。645のレンズにはマニュアルフォーカス時代の「A645レンズ」とAFの「FA645レンズ」があり、それぞれ35mm判用レンズと同じくらいの基準で精度を詰めて作られています。ですから実は645Dで使用することによって初めて、レンズのもつ本当の性能を生かしきることができるとも言えます。FA645レンズはレンズの情報をボディで読んで、収差補正などもかけられます。マッチングもいいし、非常に高精細な画を得ることができます。

--中判デジタルには「フィルム時代のレンズでは性能を発揮できない」という意見をよく聞きますが、フィルム時代のレンズを推奨しているのでしょうか。
前川:今申し上げたように十分推奨できます。645レンズはマニュアルフォーカスレンズのA645レンズより、オートフォーカスに対応したFA645レンズのほうがマッチングが良好ですが、両者とも問題なくご使用いただけます。弊社は互換性を大事にしているメーカーですので、先に紹介した通り、ペンタックス67のレンズ群も付けられます。ペンタックス67レンズ群は645と比べると少々大らかな設計なのですが、大きなイメージサークルの中心部分だけを使うことになるので画面の均一さが大変良好で、画面の中心と端の画質の差があまりありません。67レンズは解像力などの点で645レンズに一歩譲るものの、十分ご使用いただけます。レンズはそれくらい懐が深いのです。

--新しいレンズのD FA645レンズのイメージサークルは645フルフレームに対応しているのでしょうか。
前川:44×33mmの645Dのセンサー範囲においては、デジタルに最適化されていますが、その周りにフィルム645範囲のイメージサークルを持っています。

--ということは今後、645フルフレームや48×36mmのCCDを搭載した新ボディの発売も想定されているということですね。
前川:そういう可能性はあります。

■連結撮影はソフトさえあれば対応可能

--「連続撮影は約13コマまで」と発表されていますが、13枚撮るとどういった状態になるのですか。
前川:連続で13コマ撮影すると、バッファメモリがいっぱいになり、14コマ目のシャッターが切れません。ある程度バッファが消化されれば撮れます。

--次に書き込めるのはバッファがすべて解放されてからでしょうか。
前川:1コマ分が空いたら次の撮影が可能です。例えば、スタジオの撮影であればストロボチャージの時間がありますので、よほど連写モードでレリーズボタン押しっぱなしの撮影でもしない限り、バッファがいっぱいになることは少ないと思います。

--連結撮影への対応ですが、現状はどうなのでしょうか。
前川:現在、連結撮影ができるソフトは用意していません。ターゲットは風景撮影なので、屋外にパソコンを持ち出す人もそういないだろうということで見送りました。ただ、実際に発表してみるとやはりスタジオ系のカメラマンからのご要望が非常に高いです。

--現状のハードウェアでは対応できないのでしょうか。
前川:対応は可能です。APS-C機のK10DやK20Dなどの過去機種では連結機能に対応していました。ようするにソフトさえ用意できれば対応できます。

--こういったカメラですとライブビューがほしいところですが、搭載はできなかったのでしょうか。
前川:正直、商品企画的には搭載したかった機能ですけれども、静止画の画質を重視して選択したCCDにはたまたまそういう機能がありませんでした。

--現在はフォーカルプレーンですが、今後レンズシャッターを考えているとか、今後のレンズのラインナップで決まっていることがあればお話ください。
前川:レンズシャッターは特に予定はありません。645Dは、センサーがフィルム645判よりひと回り小さいので、同じレンズをフィルム645に装着したときより画角が若干望遠側にシフトしてしまいます。結果、現状のラインナップでは超広角域が若干手薄になってしまうので、そこをフォローするために超広角のレンズを1本予定しています。

--最後に他社にない強みをまとめてください。
前川:やはり中判で超高画素機でありながら、ハードに使えるということです。「フィールドカメラ」がコンセプトのカメラなので、寒いところに持っていっても雨露がかかっても大丈夫です。こうした環境でもナーバスにならず、思う存分使っていただけます。

--ありがとうございました。


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