●RAWデータの認識を改める
そこでRAWデータに関する認識はこのように再定義してみました。
「イメージセンサーから出力されたアナログデータに、そのイメージセンサーにとって具合のよいバイアスをかけ、時にはシャドウやハイライトの情報をドライブしたものをデジタルデータに変換したモノクロ画像」。
「マトリックスの情報に適用するべきガンマカーブ、EXIF情報、メーカーノーツ、コンポジット情報などのテキストデータ」。
「仕上がりを想定したプレビュー(場合によってはフルサイズのものもある)」。
あらためて考え直してみるとRAWデータとは、「イメージセンサーから取り出されたデータをそのままAD変換するのではなく、そのメーカー(あるいはイメージセンサー)にとって必要な情報を付加されて記録されている、マトリックス越しに撮影されたモノクロ画像とマトリックス情報とガンマカーブ」であり、そして撮影情報の中には「このように仕上げたい」「このカラープロファイルで撮影された」、メーカーによってはカラーのフルサイズのJPEGデータなどの情報が格納されているのです。
私は先ほどのモザイク模様のモノクロ画像を初めて見ました。メーカーにより、中にはハイライトまでものすごく伸びのあるデータが生成される場合もあれば、シャドウ側にそれを持つものもあります。
中判デジタルカメラの場合はこの作業が少なく、全体に広い情報を記録しているようです、うーん! 改めてRAWデータは確かに素材生が高く、ダイナミックレンジが広く、色調変換にもかなりの耐性を持ってはいますが、「どのカメラで」「どんな露出で」「レンズはこれで」「どのような方向性を持って」撮影されたのかが記録されているのですね。
●RAWデータにも著作権はある!?
これまで筆者も含めて「RAWデータは未現像」ファイルなので、現像ソフトで現像しましょう、と言ってきました。このたとえ方はどうやら間違えていたようです。
なぜなら、「どのように撮影されたか」をきちんと記録しているのです…その証拠にカメラの背面液晶で仕上がりを確認していますよね? 未現像ではなく画像としてのすべての情報を格納した状態で、それらの細かいところが未調整なだけなのです。
記録されたモノクロ画像には結局、撮影時のシャッターチャンスやアングル、被写体の選択やライトの角度、そしてホワイトバランスや撮影時の露出までいろんな情報が詰まっているのです。そしてやはり適正露出は1つです。ただしRAWデータの場合はダイナミックレンジが広いためかなりの幅の調整が効きます。
でも極端に偏った露光をかけた場合は、RAWデータといえどもそれを救うことは不可能なのです。RAWデータはけっして「魔法のデータ」ではなく「広いグラデーション情報を持った現実的なデータ」だと認識するのが一番まっとうな気がしてきました。
ですのでRAWデータは、現像されるものではなく「微調整するためのデータ」が基本で、その画像に大きなドライブをかけることも可能だ、と認識し直したいと思います。
JPEGもTIFFも容易に改ざんでき、圧縮、非圧縮も可能で、これらはコンテナ形式のファイルです。RAWデータも、単純に(それらよりもより可塑性が高いが)同列のファイルだといえるのではないでしょうか?
「RAWデータ」に著作権があるのかという論争に1つの解を出したいと思います。
著作権が発生するためには「写真表現の確定、固定が必要条件」と言われますが、RAWデータは十分にその条件を満たしているといえるでしょう。もしRAWデータに著作権がないなら、JPEGもTIFFにもあり得ません。
RAWで撮影しているカメラマンにとっても、一人歩きしてしまったRAWデータに「著作権がない」なんて言われたくないですよね。
(2014年1月)
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