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第17回:イメージセンサのピクセルピッチ

鹿野宏/カメラマン http://www.hellolab.com
電塾 http://www.denjuku.org/

ここでは、中判デジタルカメラの入門者向けの記事として、中判デジタルカメラとは何か? デジタル一眼などと比較してどこが優れているのか? などを具体的に解説していく。今回はイメージセンサーのピクセルピッチと画質の関係を考えていこう。

●イメージセンサーはより多くの光を取り込みたい

今回はイメージセンサのピクセルピッチに関して少々考察してみたいと思います。

通常の35mm一眼タイプのデジタルカメラはそのセンサーサイズ故に1ピクセルの直径が小さい。そのためさまざまな手段を講じて、その小ささをカバーしています。センサーサイズは光を受ける受け口なので、小さいと光がいっぱい入らない。光が入らないということは暗い。暗いと情報を抽出しきれずにノイズやエラーが出たりする。そこでイメージセンサー全面にレンズをつけて光を集めたり、裏面反射という「センサーをひっくり返して」受光素子が少しでも前面に出る形式を作ったりしています。

中判デジタル用のイメージセンサーも、いずれ超高画素(2億画素くらいかしら?)になれば、そのような技術が必要になるかもしれませんが、今のところその手の仕掛けは持っていません。

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▲メージセンサーの構造(クリックで拡大)

●35mmデジタル一眼のイメージセンサーの場合

さて、35mmタイプのデジタルカメラのセンサーサイズはさまざまです。マイクロフォーサーズ、4/3インチからAPS-Cタイプ、そしてフルサイズといろいろありますが、とりあえず代表として35mmフルサイズを考えてみましょう。

現時点で35mmサイズで最大の画素数は3,600万画素。2,400万画素がそれに続き、1,680万画素クラスが主流です。センサーのサイズは36mm×24mm。3,600万画素となると長辺約7500pixelとなり、これが36mmの幅に入るわけですから1mmに208個のpixelが並んでいる計算になります。208pixel par mm 。これをdpiに直すと、なんと5,283dpiというすさまじい集積度になるわけです。そしてその1ピクセルの直径は単純計算で0.0048mmに当たります。よく使われる単位で言うと4.8マイクロメートル(μm)の直径を持つ穴だと考えていいでしょう。細い髪の毛の太さが約50μmといわれていますので、その10分の1の太さが1ピクセルだと言うことですね。

※ミクロンという単位でも表記されることがありますが、これは昔の単位でinchやヤードと同じ扱い。現在は国際基準でメートル法に則っているのでマイクロメートルが正しい。単位の記号は「μm」でどちらも同じ。1マイクロメートルは1メートルの100万分の1。1mmの1,000分の1に当たります。

 
●余裕ある中判デジタルのセンサー

一方、中判デジタルカメラも主流の4,000万画素のイメージセンサで考えてみましょう。こちらはセンサーサイズが32.9mm×43.9mm、5,484×7,320画素となり、画素数はほとんど同じです。でも1mmに並ぶpixelは約166個。ピクセルピッチは6μmとなります。ここの1.2μmの差が中判デジタルカメラの魅力だといえるのです。何しろ現在最高画素を誇る8,000万画素機でさえ、5.2μmを維持しているのですから。

さて、ここまでは雑学として置いておきましょう。何が言いたいかというと「細めの髪の毛のほぼ10分の1」「1mmに200個近く並んでいるpixel」がそれぞれ精細な輝度情報を取り込むためには、「2μmぶれた瞬間にpixelが太ってしまう」ということです。1ミクロン程度であればその80%の情報は正確に取れますので、ややアンチエイリアス効果がかかっただけといえるでしょう。しかし半分近くぶれてしまうとせっかくの高解像度が無駄になります(もちろん半分の画素数で使用する分には問題ありません)。カメラブレを1μm以内に収めるなんて銀塩の時代には考えもつかなかった事態で、これはクイックリターンミラーが上がったショックで十分に予想される振動です。高速シャッターを使用しても防ぎきれない可能性もあります。

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▲基本的なpixelの並びです。まったくブレていなければ理屈通りにデータを収得します(クリックで拡大)

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▲1µmだけぶれた場合。ブレた部分は[乗算]で黒く合成されています。まだ多くの面積に正しい情報が記録されているので、やや「色ノイズ」的な物が加わってそれぞれの彩度がやや濁る程度でしょう(クリックで拡大)


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▲縦方向に1pixel(約6µm)ぶれるとこんな状態になってしまいます。もちろんシャッターが開いているうちに移動するのですから、まったくデータがなくなることはありませんがここまでくると完全に「ブレ」として記録されます。(クリックで拡大)

●「1μm以上の振動は許さない」を念頭に撮影する

モデルなどの動きやシャッターチャンス、自由なアングルを優先する場合は別ですが、「被写体を精細に記録したい」という場合、私が中判デジタルカメラを使用する際に神経を注いでいるのが「1μm以上の振動は許さない」ことです。十分な強度と粘りを持ち、適度な重さの三脚と雲台。ある程度レンズが長くなると「レンズとボディの両方を支えるしかけ」を必ず導入します。そのときにより、スペーサーだったり2台の三脚だったりしますが、これはとても有効です。そしてリモコンで切れるシャッターと、できるだけカメラから離れて立つことも心がけています。床がよほどしっかりしていないと、自分の体重移動が三脚をゆがませていることもあるのです。

中判カメラはその大きさや重さもぶれにくい1つの理由です。さらにレンズシャッターを搭載したレンズが多いためしっかりと三脚に固定し、ミラーアップしてしまえば驚くほど振動が小さくなります。これも35mmタイプ一眼レフに比較したときに「ブレにくい」と言わしめる優位性です。

その次がピント位置。これもちょっとピントが外れるといきなり解像しなくなります。筆者の場合は物撮りが多いおかげもありますが、ほとんどの場合実際にシャッターを切り、取得した画像を200%で拡大した状態で判定しています。遠回りですが、何よりも確実な方法だと思います。(2013年12月)


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