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第12回:中判デジタルカメラのレンズとは:その2

鹿野宏/カメラマン http://www.hellolab.com
電塾 http://www.denjuku.org/

ここでは、中判デジタルカメラの入門者向けの記事として、中判デジタルカメラとは何か? デジタル一眼などと比較してどこが優れているのか? などをセンサー、レンズなど具体的な項目ごとに解説していく。今回はレンズ。そのハードウェア的特性から中判に最適なレンズ像を考えてみよう。

●レンズの味を楽しむのも中判カメラの醍醐味

「写真を撮るためのレンズの良さ」は解像力やMTF曲線などの数値だけでは語れないことは皆さんもご存じのはずです。また、設計思想の違いもあります。どちらかというと35mm用のレンズは解像感重視。中判以上のレンズは階調感を重視して設計されます。この2つはトレードオフの関係にあるようで、両者のバランスをいかに取るかが成功のカギのようです。中判レンズの場合は解像力は十分な画素数を持つイメージセンサに任せて、コントラストと階調感を重視できるのが最大の強みでしょう。

筆者はこれまで、カメラ用レンズは周辺まで明るさも解像感も変わらず、歪曲収差も色収差もないレンズが高性能だと信じていました。しかし描写力は、それだけではなさそうです。細い線の描写が得意だったり、空間を感じさせる立体感が強い、ピントが合っているところと合っていないところの差が大きいため発生する立体感…ピントの芯にややフレアがかかることで軟らかい表現になる…ただ、解像感が高く、周辺まで均一で絞りを空けても絞っても劣化の少ないレンズとはひと味違う“レンズの味"を楽しむのも中判カメラの醍醐味の1つといえるでしょう(商品撮影とは異なる分野なのですね)。

立体感が強調されるレンズや、開放近くの時はピーキーなピントを持値線が太い印象ですが、ちょっと絞ると全体の解像感が増し、線が細くなる印象を受けるレンズもあるようです。最近は減りましたが、こういう絞り値によって性格が変化するレンズを使うときは、あくまで開放F4程度に固執したりもします。もちろん F32以上絞ると今度は回析現象のせいでレスポンスが悪くなってしまうのです。かといってパンフォーカスにしたければ回析現象に目をつぶってもF32まで絞ることだってあります。絞りの使い方は単にイメージセンサーに送る光の量をコントロールするだけでなく、被写界深度や明るさや“ボケ”の変化はもちろん、レンズの描写力や性格を変化させて絞り値を決めるという使い方があるのですね。

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▲シュナイダーの80ミリレンズを装着した645DF+645DF+(クリックで拡大)

●正確無比と個性的なレンズの両面で期待

最近のレンズは優等生が多く、MTF曲線も素晴らしく、解像力もかなりあり、周辺まで均一に解像し、歪みもないものが多いのですが、設計の古いレンズの楽しさもなかなか捨てがたいものがあると思うのです。この場合は無理に解像感や周辺の色にじみを気にする必要はないでしょう。

また、主要被写体を背景から浮かび上がらせるための“ボケ”る量は、焦点距離に依存します。中判デジタルカメラの標準レンズは70mm〜80mm程度。これだけですでにボケる量がかなり大きいということが理解できると思います。35mmのようにF1.4などという弩級に明るくはなくとも、中判のF2.8の“ボケ”量は35mmのそれと同程度と思ってよいでしょう。

中判レンズは「正確に緻密に写し取る」は、もちろん期待される能力ですが、「被写体により撮影者のイメージを投影して撮影する」ことも同時に大きな魅力だと思います。

たぶんイメージセンサーに4×5というような大きなサイズが一般化することはあり得ないと思います。今後大きなサイズのイメージセンサの究極は6×4.5センチフルサイズ、あったとして6×7(こちらはインチ)が最大かと想像しています。
今後も開発の「高い壁」は存在するでしょうが、それをを乗り越えて「正確無比」なレンズだけでなく、個性的な魅力のあるレンズも出てくることを期待しています。(2013年7月)


Column レンズ収差チャートで自分のレンズの性能をチェック!

筆者が使用しているレンズ収差チャートを掲載しておきます。300dpiでプリントすると120×182cmのチャートになります。24MBあるので、ダウンロードにはご注意ください。

チャートの使い方について

▲レンズ収差チャート2011(クリックで拡大)


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