●イメージセンサーの平面性に対応したレンズの解像力を
さらに言うと4×5、5×7、8×10などの大判カメラの場合は、その平面性を保つことが非常に難しく、仮に35mmフィルムカメラと同等の解像感をフィルムが持っていたとしても、均一にピントが合うことが考えられなかったのです(もっとも35mmやブローニーフィルム自体、基本的にカーリングを持っていたので、周辺部の平面性は良くありませんでした)。
筆者たちはそれを克服するために「フィルム面をホルダーベースに吸着させ平面性を保つためのバキュームシステム」を持ったフィルムフォルダーを使用していたりしました。現在のデジタルカメラに搭載されたイメージセンサの素晴らしい平面性はまさに「憧れ」だったのです。その上、チルト/シフト/ライズ/フォールなどの「レンズをフィル面に対して曲げたりずらしたりすることで、被写体の形を見た目通りに撮影したり誇張するため、こちらはさらに広大な包括角度が要求されていたのです。
もし、かつての大判レンズのカタログをお持ちでしたらちょっと見てみてください。ワイド系のレンズは広い包括角度を誇るものの、ミリ単位の解像感はさほど良くはありません。テレタイプのレンズの方が解像感は上だったと思います。もちろん4×5フィルムは35mmフィルムに対して16倍近い面積を持ち、8×10になるとさらにその2倍ですので同面積比で解像感が半分だったにせよ、解像感においては遙かに35mmフィルムの上をいくことができたのです。
ところがデジタルカメラとなると、平面性が素晴らしく良い。真っ平らな平面上にイメージセンサが並んでいるのですから当然です。さらにデータとしては同じPhotoshop上で展開され、35mmタイプのデジタルカメラの画像と同列のように比較されます。
こうなるとこれまでの「中、大判レンズは35mmカメラと比べてそれほど高い解像感は不要だ」という図式が成り立たなくなり、1ピクセルが解像できる能力に同等のものを求められるのです。
簡単に100%表示と言うと…それまでは通常は見ることができなかった拡大画像を30インチのディスプレイで見られてしまいます。今度はレンズに「広い包括角度+35mmカメラと同等の解像感」を求められてしまうようになったのです。
フィルム時代は名器だったレンズがなぜデジタルカメラに付けると特に解像感においてがっかりしてしまうのか…このあたりに理由がありそうです。この現象は中判デジタルカメラの場合にも当てはまるのです。
|