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第9回:中判デジタルカメラによる人物撮影

鹿野宏/カメラマン http://www.hellolab.com
電塾 http://www.denjuku.org/

ここでは、中判デジタルカメラの入門者向けの記事として、中判デジタルカメラとは何か? デジタル一眼などと比較してどこが優れているのか? などをセンサー、レンズなど具体的な項目ごとに解説していく。今回は人物撮影のポイントを解説していく。

●600万画素ではモデル写真には足りなかった!?

人物撮影も視点を変更すれば、前回説明した風景写真と同じような考え方に立つことが可能です。むしろ、人物写真の方がさらに分かりやすいかもしれません。それは全身、半身、アップで変化する空間周波数の変化です。

以下の作例は古い資料ですが、同じモデルを600万画素相当のカメラで撮影したものです(今のデジタルカメラに慣れている方々にはなじみのない画素数かもしれませんが、デジタルカメラの普及期にはデファクトスタンダードだった画素数です。当時はたった600万画素しかないカメラでいかに高精細に撮影するか? ということが大きなテーマでした)。

全身像を撮影した写真ではドレスのエッジ、目の輪郭などは解像していますが、眉毛、まつげは解像していません。このまま A4サイズであれば印刷しても持ちますが、顔の部分をトリミングして使用するのは難しいでしょう。600万画素のデジタルカメラの限界点です。この場合眉毛やまつげなどは非常に高周波線分が高いため(眉毛やまつげの太さなどが3ピクセルに収まらない)、元々の画像内で解像、記録されていないのです。記録されていない「形」を再現することは不可能なのです。

半身画像はまつげや眉毛が、ややぼけているもののそこそこ解像しています。同じ画素数ですがトリミングしなければA3程度にプリントが可能です。「全体の空間周波数が下がってきた」と捉えて良いと思います。

さらに顔のアップとなると眉毛や睫毛が1本づつ判定できるほど解像しています。人物表現において、もっとも小さな形として要求される髪の毛、眉毛に対して最低でも3ピクセル程度のピクセルを使用して記録しており、産毛さえかすかに記録していました。「記録したい形」の中に記録不可能な高周波成分がすでになくなっているのですね。

このアップで撮影した画像はたった600万画素ではありますが、拡大するための情報がきちんと記録されているため、どれだけ大きくプリントしても十分に形や質感を再現可能です。

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全身像と半身、そしてアップで撮影した3枚の写真を並べてみました。50%で表示していますが、この段階では大きな差異は感じません。(クリックで拡大)


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目の部分を中心に200%で表示してみました。(クリックで拡大)

全身像の目の部分をアップで撮影した画像と同じサイズに表示するには場合は700%に拡大する必要がありました。でも元々の画像に睫毛や眉毛の情報が含まれていませんのでそれらを再現することはできません。目の輪郭でさえ、階段状になっています。

次回は600万画素の写真と5,000万画素の写真を比較しながら、人物撮影における高解像度カメラのメリットを考えていきます。(2013年5月)

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目の部分を同じ大きさになるように倍率を変えて表示しました。(クリックで拡大)


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