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第8回:作例で見る高解像度デジタルフォトの世界

鹿野宏/カメラマン http://www.hellolab.com
電塾 http://www.denjuku.org/

ここでは、中判デジタルカメラの入門者向けの記事として、中判デジタルカメラとは何か? デジタル一眼などと比較してどこが優れているのか? などをセンサー、レンズなど具体的な項目ごとに解説していく。今回は高解像度な風景写真の作例から、デジタルフォトの解像力を実感していただきたい。

●中判デジタルカメラならではの領域へ

今回は、前回に引き続き、風景写真と解像感について語っていく。解説は前回をお読みいただくとして、ここでは作例をもとに、画素数と解像感の関係を述べていきます。

なお、以下の3点の画像は、ダウンロードしてディスプレイ上で見ていただくことが可能ですが、著作権は移動しません。 他者への譲渡、転載、二次使用などそのほかの行為はすべて禁止します。

2,400万画素の画像:筆者が撮影した風景で気に入っているものがあります。午後の日差しがそろそろ消えていこうとしている北海道、夕張付近の渓谷です(ISO400 1/500 F8)。2,400万画素のカメラを使用して撮影しました。もう二度とこの情景、このタイミングに出会えることはないでしょう。でもこのとき持っていたカメラは2,400万画素のカメラだったのです。100パーセントに拡大したときに、岩肌が…水のしぶきが、木立や苔が今一歩解像していないためA3以上に伸ばしたときに力が、立体感がついてこないのです。2,400万画素のカメラは、多くのシーンにおいて使用可能で、A3までカバーし、場合によってはA2までの拡大も可能です。けして悪いとは思いません。ただ、この写真はA0まで伸ばしたい…と後悔している1枚なのです。

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(クリックしてオリジナル画像を表示)

5,000万画素の画像:50メートルほど離れた位置から120mmで撮影した写真。最初に出した九段で撮影しました(ISO100、1/125 F8)。もちろんメインの被写体は斜光を浴びる桜で、日が当たっている桜と影になっている桜、斜光の綺麗さに心を引かれてシャッターを切りました…ところが画像を開いてみて撮影した自分自身がびっくりしてしました。それほどの望遠レンズではありません…120ミリの中望遠です。それなのに下生えの雑草たちがこれほどまでに生き生きと描写されているとは…通常メインに狙ったものしか気にしていないのですが、この感動は大きいものでした。

取得した画像にごまかしがないのです。イメージセンサが大きいため、ピントはかなり浅く、少し遠いところはすぐに“ぼけ”始めています。でも焦点面に合焦した部分はこれでもかと解像し、それがまた素晴らしい立体感を醸し出してます。この写真はフレスコ・ジークレで長辺1200mm、解像度180dpi相当でプリントし、今でも自宅の壁に貼ってあります。11×12のフィルムであったとしても、とうていたどり着けない立体感、空間感でお気に入りの1枚となっています。筆者が中判カメラにのめり込んだ1枚と言っていいでしょう。

これらの写真は、かつての「大型カメラ」を使用している感覚で「しっかりと三脚を立て、じっくりと構図を決め、日の光のタイミングも見計らいながら息を吐きつつシャッターを切る」そんな写真の楽しさを改めて実感できるのです。この感覚も「中判カメラならでは」といえます。

さらに8,000万画素となると、ロール紙を長辺方向に使ったプリントでなければその良さを実感できないほどの情報量を持ちます。8,000万画素という条件をクリアーするだけのレンズとセットで使用してこそのお話しで、アーカイブ系列の仕事でなければここまでの解像力は不要だと思われるほどです。1ショットタイプのデジタルカメラがここまでの解像感を持ったとき、これまで弱点とされていた偽色、偽解像、色分離といったほとんどの弱点を克服してしまいます。画素数を増やすことで、デジタルカメラには再現力不足とされていた「立体感」まで取り込むことが可能になったのです。現在の1ショット機がかなえられる「最高の」画質がここにあると思います。

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(クリックしてオリジナル画像を表示)
古都、南禅寺から上水を南に下ったところにある風景です(ISO800、1/250 F8)。スナップのつもりで歩いていて何気なく撮影したショットです(そのため、この日は三脚を持っていませんでしたし、午後も遅かったので感度を800まで上げています)。偶然画面の中心奥に人工的なフェンスがありました。このフェンスが見事に3ピクセルにあたり、ここまで解像したのです(5,000万画素機です)。
撮影ポイントからフェンスまで100メートルはあるでしょうか? 2,000万画素クラスのカメラで撮影した場合はこうはいかなかったと思います。筆者は、けして2,000万画素クラスのカメラがいけないと言っているわけではありません。卓越したフレーミング、画面に込めた思いで、素晴らしい写真を撮影することが可能です。ただスナップのつもりで撮影したこの1枚に…それをオープンした瞬間に思いもよらぬ感動を覚えたことを知っていただきたい…画質にプラスアルファがあるのが中判デジタルカメラなのです。

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(クリックしてオリジナル画像を表示)

Column 色モアレの処理

上記の作例のように、高解像なデータとなるとモアレを起こす限界値がより小さくなり、普段はほとんど発生しないのですが、時としてこのビルの写真の作例のように、モアレが起こってしまう場合があります。色モアレは専用ソフトで消せることが多いようですが、他のピクセルも「丸めて」しまうことがあります。そんな時にPhotoshopで行える有効な対処法を1つ紹介しましょう。

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Photoshopでモアレを起こしている部分を丁寧に選択します。(クリックで拡大)
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元の色彩に近い部分を探して[スポイトツール]で色彩をピックアップします。(クリックで拡大)

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モードからカラーを選択します。これにより明暗情報はそのままでピックアップした色彩だけを上塗りすることが可能になります。(クリックで拡大)

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ブラシを使って色相情報だけを塗り込めます。
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必要であれば選択範囲を解除してブラシサイズを小さくして残りの部分に正しい色彩を乗せて完成です。けっこう簡単でしょ? 色もモアレを起こした部分にだけ選択的に処理するので他の部分に悪影響を与えません。この方法を覚えると色モアレはそれほど怖がる要素ではなくなります。
 


次回はもう1つの写真の魅力、人物写真についてお話しいたします。(2013年4月)


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