「Carnival2000」は、カラークリスプ社というデンマークの会社が後発で発表したデジタルカメラで、動体撮影が可能なシングルショットと高品位のマルチショットを1台のカメラで使い分けられる画期的なデジタルカメラでした。当時の標準画素数である400万画素 のCCDを使った3ショットタイプのFotex F10やLeafのDCBIIとほぼ同価格であったため、 コストパフォーマンスの高い製品です。
マルチショットモードとは、R、G1、B、G2の順に配列されたマトリックスフィルタが4個一組CCDの直前に固定され、CCDには密着してピエゾ素子が配置されていま す。G1フィルタポジションで1ショット、Rフィルタポジションで1ショット、G2フィルタポジションで1ショット、最後にBフィルタポジションで1ショット、合計4ショット1ピクセルずつピエゾ素子に信号を送って CCDを移動することで、3ショットタイプと変わらない品位の画像取り込みに成功しています。。
問題は撮影にかかる時間で、38秒と遅いこと、実画像データとしてハードディスクに保存されるまでに2分30秒ほどかかること(PowerMac 8100/80使用時…当時のデータです)、マルチショット撮影が不安定で失敗する確率が高かったこと、 シングルショットの画質がもうひとつなので、当時「じゃじゃ馬なデジタルバッグ」と評されていました。
ともあれ、このカメラの出現は「シングルショットがなければデジタルカメラとしては不完全だ」という思いの結晶だろうと感じられ、この方式は現在もジナー社、ハッセルブラッド社のデジタルカメラの一部に引きつがれています。
さて、筆者がこれまで触った、あるいはテストした機種を中心にデジタルカメラの歴史を振り返ってきました。黎明期は「オールマイティ」なカメラが存在せず、目的に応じて、開発手段に応じて、さまざまなタイプのデジタルカメラが発生してたのです。
●方向性が収束してきたハイエンドのデジタルカメラ
ビデオカメラタイプは研究用途に、スキャナタイプはアーカイブ目的で、今でも現役ですが、コマーシャルフォト、あるいは「写真家が持つカメラ」ではほとんど存在感がなくなりました。高品質を謳われた3ショット機もマルチショットとして一部の機種に残っていますが、これも動体を撮影できないカメラなのでアーカイブ目的としてしか使用されていないようです。(もともと美術品を巨大なデータで撮影する仕事が多いため、実は筆者も1台所有しています。筆者の場合は必要なのですね)。
そして現在主流なのが、35ミリタイプはもちろん、バックタイプデジタルカメラもどのような被写体も撮影でき、オンコードでもオフコードでも撮影できる1ショット機となったのです。
ただ、1ショット機はその構造上「演算」が不可欠なため解像感は実画素の2/3。200パーセント拡大が厳しい場合もあり得ます。また、色分離の悪さ、モアレの発生なども問題でした。35ミリタイプのデジタルカメラはこれをコンピュータによる急激な技術革新の能力、やや解像感を失ってもモアレを軽減させるアンチエイリアスフィルターなどで解決してきました。でも、最大の解決策は「画素数を増やす」ことだったのです。目伸ばしが難しければ最初から大きな画素で撮影する、画素数がある一点(2,400万画素程度と想像する)を超えるとモアレの発生する確率は極端に減る、画素数が多いことで色分離の悪さも回避できる…などなど。
これらを考え合わせると「画素数の多さ」は、実は品質向上の一因であることが分かります。35ミリタイプのデジタルカメラがそのセンサーサイズの縛りで最大でも800万画素だった時代に、バックタイプは倍の1,600万画素をクリアーしていました。
次回は、現在主流となった1ショット機の中の35ミリタイプとバックタイプの違いを見ていきたいと思います。(2013年12月)
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