●PCJ Interview
・File12 飯田かずな
・File11 河合俊哉
・File10 酒匂オサム
・File09 P.M.Ken

・File08 高木こずえ
・File07 太田拓実
・File06 鈴木心
・File05 青山裕企
・File04 小山泰介
・File03 奥本昭久
・File02 常盤響
・File01 辻佐織

●Company File
・File08 アドビ システムズ
・File07 富士フイルム
・File06 駒村商会
・File05 ジナー
・File04 ハッセルブラッド
・File03 シグマ
・File02 フェーズワン
・File01 ライカ

●Overseas Photographers
File09 Josh Madson
・File08 Michael Kenna
・File07 Todd McLellan
・File06 Mona Kuhn
・File05 Diana Scheunemann
・File04 Albert Watson
・File03 Nick Meek
・File02 Rankin
・File01 Ron van Dongen

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Digital Tools



▲最近の作品から、「Winart」美術出版社(2010年)。商品のラベルではなく、キャップシールとシルエットのみを撮影し、ワインのマニアックな世界を表現した。(クリックで拡大)

▲最近の作品から、「CA」ポスター(2011年)。滴る液体だけを抽出することで、野菜の生命力を表現。(クリックで拡大)
▲最近の作品から、「CONVERSE」DM (2011年)。実際に作り上げたプロップを撮影・それ以外の素材を合成することで、幻想的でありながらリアルな世界を作り上げた。(クリックで拡大)



●作品に応じて自由なアプローチの撮影テクニック

−−一例として、亀の島の作品はどうやって作っているのですか。

河合:これはプロップスの方が現物を作りそれを撮影しています。

−−合成ではなく、オブジェを作ったのですね。

河合:そうです。ただ空、海、ヨットなどは合成です。「Happy Fake Island!?」というテーマなのですが、見る人がフェイクだけど本物なんじゃないかと想像してしまうような世界観を意識しています。実は本当に巨大な亀の大陸がどこかの世界にあって、その亀の甲羅の上にまた別の世界があるんじゃないかと。Photoshopでは上から光がきていて、上にいくに従って明るさが斜がかかった感じになるように調整しています。

−−次に、野菜が融けている作品はいかがですか。

河合:これは合成です。野菜に液体をかけて垂れてくる瞬間を撮ったのですが、ブロッコリーなら緑の野菜が融けてくる表現がしたいと思いました。融けて出てくるにはどうしたら良いのかと考え、液体を赤くし、コントラストを上げて Photoshopで色選択して赤のデータを抽出しました。

−−それで最終的にこの色になるんですね。

河合:撮影で凝ったことを行うので、ほとんど一発撮りです。茄子は血管が浮き出る感じにしたいと思いました。

−−服の作品はいかがですか。

河合:これも一発撮りです。このシリーズはヌメロの初期の頃の仕事です。ターボファンを下に置いて、そこからテグスで服を吊っています。風を当てるとはためくので、そこに花弁を放ち撮影しました。服も、固定されたファッションイメージより瞬間的な写真の方が絵になるので、そういうところは常に狙っています。

−−先ほどおっしゃっていた違うことをやりたいという考えの現れですね。こういった撮るための方法は河合さんご自身で考えているのですか。

河合:自分の頭でシミュレーションをしています。

−−そこも大事な資質ですよね。しかも基本は一発撮り(笑)。

河合:一発撮りですね(笑)。だから現場でワッと歓声が沸くのが楽しいです。撮った瞬間にこれが出てくるので。だから現場の雰囲気はすごく大事にしています。

−−頭で描いたイメージがどうしても現場で実を結ばないということはあるのですか。

河合:ありますね。そのときはPhotoshopに頼ります。そのときクライアントには口で「ここはこうなる」と説明をして納得させるしかないですね。

−−Photoshopのポストプロダクションも必要に応じて行うのですね。

河合:そうですね、それはもう。本当になんでもできる魔法のツールだと思います。ないものを作ることができるので。ハイライトを飛ばしたりとか、物撮りだからできるのですけれど。




▲最近の作品から、「週刊文春」文藝春秋(2011年)。夏の特集号での撮影だったので、シンプルでさわやかなイメージを心がけた。(クリックで拡大)

▲最近の作品から、「FRaU」講談社(2012年)。鏡のような素材で作られたボトルのデザインを生かし、そのまま鏡の世界に閉じ込めた。(クリックで拡大)
▲最近の作品から「GQ JAPAN」CONDE NAST JAPAN(2011年)。メルセデスワゴンの無骨なデザインを表現するため、スタジオ内のセットも一緒に撮影した。(クリックで拡大)



●デジタルツールだけれどアナログ感覚

−−Photoshopではどういった機能をよくお使いになられていますか。

河合:マスク機能は絶対使いますし、細かいものだと「バッチツール」を使います。傷の修正とか、ジュエリーを撮ったとき、後ろに写ったワイヤーを消すときなどに使います。グラデーションを保ったまま、馴染ませることができるので。今の新しい機能でいう「コンテンツに応じた塗り」の初期版のような感じですね。CS6になってからは「コンテンツに応じた塗り」はよく使います。「バッチツール」をよく使っていたので、自然な感じで傷が消せますね。

あとは、レイヤーで「差の絶対値」をよく使います。というは、僕は時計を撮るときに同じ写真を合わせるんですけれど、ライトをばらして撮るんです。何度もシャッターを切ると、完璧に同じ位置ではなくてブレが生じるので、それで「差の絶対値」でなるべくきれいに合わせて、「通常」に戻してます。「差の絶対値」はレイヤーを合わせるツールとして使っています。露出違いの同じ写真を何枚も合わせていって、元に戻して、マスクをかけて足りているところを足してという感じです。時計の写真は、だいたいそんな感じで合わせています。

−−この辺はPhotoshopがないとできないですね。

河合:そうでしょうね。あと、感覚的な作業が好きなので、同じ写真のレイヤーで重ねていって「覆い焼き」で絵を描くようにライトブラシで光るように足していって、マスクかけて商品にかぶっているところだけにしたりとか。本当に筆で絵を描くようにして使っています。

−−ちなみに作業はペンタブレットですか。

河合:ペンタブレットで絵を描く感覚ですね。

−−Lightroomはお使いになっていますか。

河合:スタジオの連結撮影では他のソフトを使っていますが、取材の仕事などでは、コンパクトフラッシュでデータを取り込む時にLightroomを利用しています。スタジオでの物撮りの場合は、基本にその場で詰めた最終的な一枚絵なのでセレクト作業がないんです。でも取材では写真のセレクトが生じるので、Lightroomでデータをすべて読み込んで、その場で明かり調整?とか、感覚的にブラシで顔だけ明るくしたりしています。コンタクトシートが見やすくて整頓できるので、クライアントに見せるときにセレクトがしやすいんです。

−−なるほど。取材のときにLightroomは便利そうですね。

河合:あとは、空、海、山とか、物撮りの背景素材に使うためのストックの保管や整理に使っています。Lightroomでは現像は行わないので、駆使しているというほどではないのですけれども。

−−Lightroomはセレクト系のツールとしてお使いになっているのですね。


●今後のデジタルツールへの期待

−−今後のデジタルツールに期待すること、いままでの仕事の中でこういった機能がほしいないうのはありますか。

河合:デジタルツールはより感覚的に使えて、難しくならないといいですね。結構アナログな方なので(笑)。

−−「コンテンツに応じた塗り」などをお使いとのことでしたが、最近の新機能に関しては何か気付いた点はありますか。

河合:便利なので利用していますけれども、ようするにバッチツールの延長上ですよね。だから、バッチツールは細かいところで、大きなものは「コンテンツに応じた塗り」と、ケースバイケースで使い分けています。

自動機能でおおまかにやって、その後微調整します。最近は切り抜きの「選択範囲を調整」っていう新しいツールがありますけれど、要は切り抜ぬけるツールで、前は抽出というツールがあったんですけれど、いまだに使いますね。

やはりスチルライフなので切り抜きはかなり厳密にやるんです。だから結局は手作業になってしまう。すごいピクセルの細かいところまでやるので、なかなか自動選択は使いませんね。Photoshopはデジタルツールではありますが、僕自身はアナログ的な使い方をしています。

−−最終的にはピクセル単位まで詰めていくわけですね。

河合:物撮りの仕事で、たまに切り抜き何百カットとかあって、そのときは切り抜きは大量に使います。掲載サイズも小さいので、そいう場合は存分に使いますね。でないと追いつかないのですごく助かっています。

後は、例えばベースとなる写真が1枚あるとして、時計の針のデータファイルをファインダー上で乱雑にしているので。それをうまく整理できる機能があるといいですね。

−−リソースマネージメント的な機能ですね。Bridgeはお使いではないですか。

河合:Bridgeも使っていますが、ファインダー上で例えば、1つの写真に対して赤のカラータグで置けるとか、1つひとつのファイルに枠だけ赤にして見やすくするみたいなことがしたいですね。あとは、いちいち保存をしなくてもファインダー上で名前を変えられるとか。自分が一番作業しやすいカスタマイズができればいいなと。あと、今はSiriが流行っているので「ブラシ」と言ってブラシが使えたらすごい楽ですね。

−−iPhoneと連動したらできそうですよね。

河合:そうすると本当にレタッチャーが傍らにいて作業ができる状況になると思います。でも、Photoshopは本当に使いやすくなったと思います。僕は昔の機能も使っていますけれど、現在のバージョンは誰でも扱いやすくなってきているんだろうなって思います。



▲Photoshop上での編集作業画面
(クリックで拡大)
▲同じくPhotoshop上での編集作業画面
(クリックで拡大)



●デジタルになっても写真は写真

−−最後に、今ミラーレス一眼とかが出てきて普通の人でも良い写真を撮る時代になってきましたが、その中でプロとして何で差別化ができるのか、写真の平均点が上がってく中でプロは何をしていけばよいのか、そういったことをお考えになったことはありますか。

河合:もちろんあります。ただデジタルになっても昔と変わらなくて、写真は写真だと思います。

−−例えば、昔のフィルムの合成の限界と、今のPhotoshopを使ったイメージの広がりってやはり違う気がするんですね。

河合:でも昔の、例えばコラージュ写真とか、けっこう今と近いことやってたんだなというのはありますね。昔の前衛的な写真家の人でフィルムで多重露光した写真とか。

−−ソラリゼーションとかありましたね。

河合:ありましたね。今は意外と若手でもソラリゼーションを使っている人もいるし、でもそれって昔からの手法だと思います。

−−表現手法的にはすでに一通りあった?

河合:おそらく皆、こういうのがやりたいというのがどこかであって、それをPhotoshopなどのデジタルツールが、簡単にかなえてくれている気がします。

−−冒頭でおっしゃっていた、いわゆる物撮りの典型的な写真から、一歩抜け出すようなアプローチにこだわる理由は何ですか。

河合:きれいな写真はすごく良いとは思いますが、甘いだけじゃなくてちょっと1つまみスパイスを入れたくなるんですよね。きれいすぎる写真ではなく、渋みとかえぐみを入れたくなるんです(笑)。

−−河合さんの物撮り写真は、物そのものが主役っぽくなくて、世界観で見せている感じがします。

河合:そうですね。世界観という面では。

−−典型的な、主役がいて他はそれの引き立て役という感じではなくて、1つの世界でみせていますね。

河合:そこは心がけています。だから今、静物写真の方が、自分の絵作りが行いやすいので、こういう形でやっています。

服やバックを投げてバッと撮ることが多いのですが、固定して撮るよりも、一瞬の揺らめきだったり動きだったり、水を使った撮影もそうなのですが、瞬間的なうごめきとかは狙って撮れるものではないので、大切にしています。

−−例えば服はピンと張って撮るよりも、投げたときのほうが服本来の持ち味が出るということですか。

河合:そういうことです。ピシッとした服とかけっこう気持ちが悪いんです(笑)。

−−たしかにバッグなども投げた方が、素材に応じた動きが出て、自然な形になるのかもしれないですね。

河合:あんこを詰めるよりもきれいだと思います。

−−そもそも、ファッションがやりたかったと話がありましたが、今後やりたいとお考えはありますか。また動画はいかがですか?

河合:ファッションは機会があれば撮りたいです。ファッションにはまた違った楽しみもあるし、物撮りで覚えた技術も使えると思っています。ムービーも、もともと映像が好きなので興味はあります。自動車のプロモーションなど撮ってみたいですね。

−−ありがとうございました。



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