・リレーコラム:女子フォトグラファーの眼差し

・プロが愛用するコンパクトデジカメ

・私のレンズ、この1本





本ページは、女性フォトグラファーの皆様によるリレーフォトコラムです。カジュアルなプライベートスナップから作品まで、仕事とも一味違う、リラックスしたパーソナルショットを拝見できればと思います。カメラはiPhoneなどスマホもOKです!



第19回 中川正子

[プロフィール]
1973年横浜生まれ。1995年、津田塾大学英文学科在学中にCalifornia state university, Haywardに留学。写真と出会う。自然な表情をとらえたポートレート、光る日々のスライス、美しいランドスケープを得意とする。写真展を定期的に行い、雑誌、広告 、CDジャケット、書籍など多ジャンルで活動中。2011年3月に岡山に拠点を移す。現在、東京と岡山を往復する日々。自身の出産と震災後の世界を描いた写真集「新世界」(PLANCTON刊)は全国6カ所で巡回をし好評を得た。最新の写真集として、東日本大震災の後に岡山へ移住した人々の暮らしをモチーフにした物語「IMMIGRANTS」を発表。他に「旅の響き」(宮沢和史氏と共著) 河出書房新社刊「ふたりぶんのしあわせ」(カサイミク氏と共著) ピエブックス刊「通学路」(PLANCTON刊)などがある。






▲Canon EOS-1D Xで撮影。50mm、f/4、1/180秒、ISO-800(クリックで拡大)


●マサキくんと息子の記念写真

5歳になったばかりの息子が40度の熱を出し、肺炎にかかった。突然決まった初めての入院にわたしも慌てふためき、荷物もろくに持たずに出かける。でも、カメラは持っていくことにした。病院の狭いベッドで一緒に眠る毎日。小さいからだで戦っているのがかわいそうで、夜もずっと眠れない。

そんなときに励ましてくれたのが、隣のベッドに寝ていた中学生のマサキくん。幼い頃から入退院を繰り返している彼は、明るく、ものすごくいい笑顔で、すぐに息子とわたし両方のよいともだちに。朝はおはよう、夜はおやすみ。たった一週間だったけれど、彼らは毎日兄弟のように仲良く遊び、ずっと同じ部屋で家族のように暮らした。

「新しい保育園のクラスの懇親会、今日だったんだよね。わたし保育園とか全然いけないから今日くらい行ってコミュニケーションとりたかったんだ」。そんなことをぼそっと言うわたしに「また保育園いったときにひとりずつ挨拶してともだち作れば大丈夫だよ」とにっこり笑って言う。ほんとうに、そうね。物事の明るい面を自然と見る彼にわたしも息子もずいぶんと、助けられた。

いよいよ退院という日。マサキくんと息子は最後まで看護士さんに叱られるほど元気に遊び(マサキくんも翌日退院!)、一緒に記念写真を撮ることにした。つらいときは写真なんて結局ろくにとれなかったから。カメラのモニターを見ながらマサキくんが「この写真、サイちゃんとの思い出にしたいから送って」と言う。その後彼と息子は手紙を交換し、マサキくんの手紙には「サイちゃんは俺の大切なともだちだよ。別れるのはつらくてたまらないけれど、またね。」と書いてあった。息子にそれを読み上げて、わたしが、大きな声で泣いた。

すべてはどんどん過ぎ去り、出会いとセットで別れも増えていく。でも、記憶はいつまでも、胸に宿る。記念写真はそういう思いを暖める重要な存在。この写真をわたしも大切に飾っておくつもり。


次回は濱津和貴さんです。


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