・プロが愛用するコンパクトデジカメ

・私のレンズ、この1本





このコーナーでは、毎回プロカメラマンが愛用しているレンズについて、
作例とともに語っていただく。



No.02


オリンパス
「ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD」



文:安本 彰
1956年東京生まれ。東京工芸大学卒業後、主婦の友社写真部、高梨豊氏アシスタント等を経て1988年よりフリーランス。企業印刷物(会社案内、カタログ)広告、エディトリアルで人物写真、商品写真を中心に活動。


●オリンパスを使う理由

オリンパス「ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD」は、まさしく私にとっての「この1本」のレンズだ。仕事ではほとんどこのレンズで撮っている。多分驚く読者も多いだろう。それはオリンパスのカメラを仕事のメインとして使っていることもあるかもしれない。

そこでレンズを語る前に、カメラ本体にオリンパスのフォーサーズシステム「E-3」を使っている理由を簡単に述べたい。フォーサーズは35mmフルサイズの約4分の1のサイズの受光素子なので、今、APSサイズからフルサイズ機にシフトしているプロカメラマンからは逆行しているかに見えるだろう。しかし小さい受光部故にレンズ設計に無理がなく、とても高い解像感と優れた色再現性を持っている。製版技術者から聞いた話だが、フォーサーズレンズ群はとても印刷に向いていて、色分解の特性がとても良いそうだ。

また受光素子部分のダスト処理、防塵・防滴が確実で、取材仕事では本当にタフに使えるのが一番だ。フィルム時代にブローニーメインだった人はデジタルカメラではフルサイズ機を選択するだろうが、35mmメインだったならフォーサーズはお薦めできるシステムだ。1日中移動して撮る取材モノからスタジオでの人物や商品撮影まで、デジタルカメラの不利な点を気にさせない、まさしく仕事カメラだと思う。


●オールマイティーな1本

さてレンズであるが、これと言って不満のない、とても優等生的な描写だ。色も落ち着いていて、シャープかつボケ具合もとても素直な写真が撮れる。

筆者が本当に好きなレンズはライカのズミルックス、ハッセル用のプラナーや大判ではシュナイダーのゴールデンダゴールなど、愛すべきレンズはたくさんある。ただし、これらのレンズは「クセがある」からこその「良いレンズ」だ。

「ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD」を推している一点は、仕事で裏切らないということだ。例えばズミルックスは作品の写真では最高の好みの描写をしてくれるが、ほとんどの仕事では使えない。ハッセルのプラナーはシャープさとボケ具合が素晴らしい優れたレンズで、人物写真ではほぼ完璧な描写をしてくれるが、商品写真などキッチリした撮影では問題も多かった。

その点でこのレンズはすべての被写体に対応出来るオールマイティーな1本といえるだろう。他社の同じようなレンズも使っているが、そちらはシャープで色も派手で綺麗。しかし、このレンズの落ち着いた描写は得られない。最後は作家性や嗜好による選択になる。





▲作例1:逆光でもフレアーも少なく芯がある描写だ。
焦点距離27mm/F3.5/1/125 (クリックで拡大)

●あえて不満を言えば

不満な点はワイド側(12~13mm)でのタル型収差が少しあることと、開放F値を2.8で通して欲しかったくらいだろうか。歪曲収差に関しては、14mm以上であれば問題ないので、12~13mmはオマケと考えてもよいかもしれない。ただ今は歪曲収差に関してソフトでの修正ができるので気にしなくてもいいだろう。便利になったものだ。

また35mmの半分の焦点距離なので、ピントが合いすぎてしまう。これは欠点でもあるし利点でもある。どのレンズでもそうだが使い方次第だ。作例3のようなポートレートはもう少しバックがボケるとよい。

今回、レンズの描写など検証したが、フィルムカメラ時代は同じフィルムを使えばレンズの比較は容易にできたが、デジタル化になってレンズの特性だけではなくカメラの性能、方式の違いもあり、レンズだけの検証は難しくなってきている。

そのためレンズだけではなくカメラシステムを含めた記述になってしまい、いささか趣旨と違ったかもしれないがご容赦いただきたい。おそらくこのレンズもE-3の次の機種では違った描写をするだろう。それこそデジタルになった故の楽しみでもある。






▲作例2:60mmでの撮影、望遠でもピントが合った写真が撮れる
焦点距離60mm /F4/1/640 (クリックで拡大)
▲作例3:肌の調子が自然だ
焦点距離60mm/F11/1/125
(クリックで拡大)

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