・プロが愛用するコンパクトデジカメ

・私のレンズ、この1本





このコラムではプロカメラマンが愛用しているコンパクトデジカメについて、
その購入動機や気に入っている点などを、作例とともに語っていただく。




▲2010年2月発売。CX1からほとんど変わらぬシンプルなデザイン。純正(オプション)の皮のソフトケースやネックストラップもそのまま使用可能。私は落下防止用にケースとネックストラップの間にCHUMSの小さなカラビナを付けて持ち歩いている(クリックで拡大)

No.02


リコー 「CX3」

撮像素子:1/2.3型CMOS(総画素数 約1060万画素)
焦点距離:f=4.9~52.5mm (35mm換算値で28~300mm)
F値:F3.5(広角)~F5.6(望遠)
レンズ構成:7群10枚(非球面レンズ5面4枚)




文:野々村佳代子(nono)
関西学院大学文学部フランス文学科卒業後、カメラの道へ。現在ポートレート、料理、風景などジャンルを問わず撮影。旅と映画をこよなく愛し、特に料理は作るのも食べるのも撮影するのも好き。英語、フランス語と、ほんの少しの伊独西語が理解できる。今秋の旅では欧州25都市の美術と食を堪能。1年以内にアメリカとスペインを周遊予定。


●旅行を前提に選んだCX3

私は2010年の9月から10月のはじめにかけて、約5週間たった1人でヨーロッパ周遊の旅に出た。訪れた国はおおよそ10カ国、25都市。

5週間の旅、と言うとのんびりとした優雅な旅のようにも聞こえるが、25都市を訪れるにしてはあまりに短い。したがってそれは、次から次へ息を継ぐ間もなく走り続けるランナーのように、常に左手に地図とガイドブックを広げつつ、右手には重量20kg以上の鞄を抱えながら国境や海を越え続けるという、ちょっと無謀で過酷な旅を意味していた。

なので私はこの旅に出る際、どのカメラを持っていこうか迷いに迷った。写真は撮りたい。しかし一眼レフのように、大きく重いカメラを常時携帯する自信もない。だから私は思い切ることにした。今回の旅では写真はメモ代わり。自分の記憶を呼び起こすためだけに、極めてパーソナルな形で写真を撮ってこようと。

そこで選んだのがこのリコーCX3だ。重量は電池とSDカードを入れても、なんと206g。焦点距離35mmのフィルム換算で28~300mm相当のズームレンズ付き。にも関わらずレンズは沈胴式なので、リコー純正の本革カメラケースとネックストラップをつけても、女性用冬物コートのポケットにするっと自然に出し入れすることができる(ちょっとでもお洒落を気にする女性にとっては、このコンパクトさは重要だ)。そしてもちろん、画像も1,000万画素と申し分ない。これほどスマートでコストパフォーマンスに優れたコンパクトデジカメはちょっとないのではないか、と断言したくなるくらいの優秀さなのである。

その優秀さを示す最大のポイントとしては、極めて「適度に美しく」再現してくれる点がまず挙げられるだろう。私は旅行中、ほとんどカメラまかせにオートで撮っていた。ISO80~1600でF値もシャッタースピードもカメラまかせ。ときには手ブレを起こしたり、ピントが外れていたりすることもあったが、それもまたご愛嬌。なにしろ首からぶら下げたまま片手で歩きながら撮っているのだから、数打ちゃ当たるだろうの気軽さで撮っていく。すると、だいたい見たままの美しい光と影をそのまま写してくれる(ここに掲載した写真は一切補正していない)。



▲沈胴式レンズは電源ボタンを押すと同時に3㎝飛び出し、シャッター幕のようなレンズカバーもその瞬間に開く。ズームを最大にすると、レンズはさらに1.4㎝ほど延びる(クリックで拡大)



▲シンプルなボタン配置に大きな液晶モニタ。この使いやすさはCX1から変わらず、先日発売されたばかりのCX4にも受け継がれている(クリックで拡大)

●ケータイカメラとして十分な実力

また、設定次第で常時水準器を液晶モニタ上に表示することも可能なので、水平が気になるときにはそれに合わせて片手、あるいは両手の手持ちで撮影した。夜景もぎりぎり手持ちで撮影可能(※写真3)。公園で活発に動き回るリスにも連写撮影することによって、ズームで300mmにしても、ピントがうまく合ってくれた(※写真4)。そして今ではコンパクトデジタルカメラにも不可欠となっているハイビジョンのムービー機能がついているので、音楽や動きがあるものを撮りたいときにはその機能を活用した。マクロも1センチの距離から撮影できるので、花などの自然も美しく撮れる。今回使わなかったが、6×6サイズ風や、モノクロ、ミニチュアライズ機能というのも遊びでついている。

ただし難点ももちろんある。最大の難点は撮影直後の確認画像が荒いこと。一瞬ぎょっとしてしまうようなギザギザした輪郭の画像が目に飛び込んでは消えるので、はじめは自分の目を疑ってしまったほどだ。しかし再生ボタンを押すと綺麗に表示される(実際にも綺麗に写っている)。

もう1つ、先ほど私は「見たままの美しい光と影」が写ると書いたものの、やはりオートだと測光がうまくいかない場合もある。それも比較的日差しの強い欧州諸国においては、オーバー目に引っ張られてしまうことが多いようだ。なので、途中からマニュアル補正で常時-1/3以下に設定しておくようにした。

これらの点を考慮すれば、だいたいの日常はこのCX3で撮れる。五つ星ホテルに宿泊した際にも、このカメラは非常にさりげなく私の傍らにあった。ケータイ電話ならぬ「ケータイカメラ」の座は、長年持ち歩いていたCONTAX T3から、このCX3に譲りつつある。

5週間のハードな旅を終えた後、このCX3は瑕だらけになってしまった。しかしその瑕が、またあの私だけの記憶を呼び起こす端緒ともなっているのである。



▲写真1:旧東ドイツ領ドレスデンのフラウエン教会。晴れた日の順光下では申し分なく綺麗に写ってくれる。広角の歪みはご愛嬌(クリックで拡大)



▲写真2:南仏オランジュのB&Bの食卓に飾られた花。窓から入る朝の光が素直に再現されている(クリックで拡大)


▲写真3:ロンドンのセント・ポール大聖堂をミレニアムブリッジ方面から眺める。ISO 1600で1/11で手持ち撮影しているが、ノイズも極力抑えられ、手ブレもギリギリセーフ(?)(クリックで拡大)



▲写真4:ロンドンのセント・ジェームズ・パーク内のリス。すばしっこく動いていたが、止まった瞬間、300mmズームの連写でなんとか捉えることができた。毛並みもきれいに写っている(クリックで拡大)


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